【動画】コロンビアの地方都市、アラカタカで開催された闘牛「コラレハ」=河崎優子、ラファエル・エルナンデス撮影

 闘牛が今も見られる8カ国のうち、5カ国は中南米にある。根強い人気の一方で、動物虐待などの理由で反対運動も盛んになってきている。開催国を訪ね歩き、夕刊とデジタルの連載「現場へ! 曲がり角の闘牛」で報告した。

 取材を通じ、闘牛という伝統文化の背後に、マチスモと呼ばれる中南米特有の「男性優位主義」の存在を強く感じた。

 たとえば、コロンビア北部のアラカタカという町で見た、誰でも参加できる闘牛「コラレハ」。放たれた1頭の牛に、約400人の男性が群がる独特のスタイルだ。牛は、ほこを刺そうとしたり、マントを揺らして挑発したりする男たちの間を、猛烈な勢いで駆け回る。牛が反撃し、男性を角で突くたび、観客席から歓声や悲鳴が上がった。

写真・図版
コラレハで、牛に群がる男性たち=2025年7月19日、アラカタカ、河崎優子撮影

闘牛で負った傷、「勇敢な男の証し」

 休憩時間に観客席に来た男性は、両手を広げ、過去の闘牛で負った腕や脇腹の古傷を自慢げに見せていた。観光ガイドによると、次の闘牛で危険な動きをして観客を楽しませると約束する代わりに、お金を集めているのだという。

 「闘牛で負った傷痕は、戦争で負った傷痕のようなもので、勇敢な男の証しでもある」とガイドは説明した。闘牛は「男の強さや勇ましさ」を見せつける場でもあるのだ。

写真・図版
両手を広げて脇腹や腕の傷を見せ、観客からお金を集める参加者=2025年7月19日、アラカタカ、河崎優子撮影

 ペルーで闘牛を取材したときも、男性の闘牛士は英雄視され、男性の観客から「勇気」「克服」といった言葉とともに称賛されていた。「男は強くなければならない」という考えがむき出しになっているようで、私には息苦しかった。

 マチスモは、中南米を300年以上も植民地支配したスペインから持ち込まれ、いまも根強く残る。闘牛がマチスモの考え方を助長しているのか、マチスモが闘牛の人気を支えているのか。「鶏が先か、卵が先か」のように、表裏一体の関係にあるのだろう。

写真・図版
闘牛後、記念撮影を求めるファンに囲まれるメキシコ人闘牛士、ディエゴ・サンチェスさん(左端)=マタラ、河崎優子撮影

メキシコでは女性闘牛士による闘牛も

 女性の参入が繰り返し阻まれてきた闘牛だが、メキシコ市では今年3月、国際女性デーを記念して、女性の闘牛士3人による闘牛が開催された。より開かれた伝統文化にしていくうえで、重要な取り組みだった。

 闘牛をめぐっては、動物の福祉と伝統文化のどちらを優先すべきか、といった議論が起き、あり方の見直しを迫られている。

 将来に向けた議論では、こうした論点に加えて、男性優位主義との関係にも目が向けられ、メキシコ市のような新しい取り組みが増えていくことを願う。

写真・図版
闘牛士が刺し損ねた剣が、背中に貫通したまま闘う牛=マタラ、河崎優子撮影

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。