視覚障害のある人が路面の確認に使う「白いつえ」。しかし、スマートフォンの音声機能を使おうとすると両手が塞がってしまい危険が伴う。そこでトルコで開発されたのが、スマホと連動し、音声で道案内をしてくれる“スマート白杖”だ。自身も視覚障害がある開発担当者は「自立した生活を提供したい」と語る。
“つえ”とスマホが連動…音声で道案内
視覚障害者がスマホで音声案内などを使う場合、白杖とスマホで両手がふさがってしまう不便さがある。さらに、スーツケースなど荷物を持っていると、気付かないうちに手から荷物が離れるなどの危険もある。

そこでトルコのスタートアップが開発したのは、“つえ”が音声で道案内をしてくれる「WeWALK Smart Cane 2」だ。
たとえば、利用者が以下の様に聞くと、こう答えてくれる。
利用者:
タクシム広場まで案内して。
つえの音声:
移動手段は公共交通機関1回と徒歩350mです。
目的地は、直進して140m先にあります。そのまま、まっすぐ進んでください。

“つえ”はスマートフォンのアプリと連動し、話しかけるだけで音声認識により経路案内などの返答が得られる。複数のルートから地下鉄を使うルートなどを選ぶと、杖の上部にあるスピーカーから音声案内が流れ、目的地まで誘導してくれる。

さらに音声認識を使い、近くのカフェなどを検索できるほか、スマホを取り出すことなく通話することも可能だ。
通常の“つえ”では検知できない上半身の危険も回避
通常の白杖では、足元の障害物に気付けるが、上半身の高さにある障害物は気付けない。
また荷物や足元などに気を取られて歩いていると、顔や体が障害物にぶつかってしまい負傷することも多いという。

「WeWALK」では、“つえ”に搭載されたセンサーが最大2m先の上半身の高さにある障害物を検知。前方に障害物があると、“つえ”が音を出して知らせてくれる。
他のことに気を取られていても、音で危険を知らせてくれるのが特徴だ。
2026年に日本版“スマート白杖”の発売も
「WeWALK」は現在、英語やトルコ語など、10以上の言語に対応していて、本体価格は日本円で約13万円(850ドル)だ。日本企業と連携して日本語版の開発も進められていて、2026年の発売を目指している。
WeWALK 世界戦略担当・ジョー氏:
次の局面では特別支援学校や盲導犬協会などの日本の団体にWe WALKを約50本配布して、直接フィードバックを得ることで、技術が視覚障害者コミュニティーにどのような利益をもたらすのか知りたい。

ジョー氏は、「直接、フィードバックを収集し、製品を進化させて次のレベルへ引き上げます。そして世界中の他の地域へ展開し、WeWALKが視覚障害者の日常生活に不可欠なものとなるよう進めていきます」と話す。
専門オペレーターが視覚を24時間サポート
さらにWeWALKでは、24時間対応の専門オペレーターが利用者をサポートするサービスも展開している。
スマホを通して利用者がしたいことを伝えると、スマホの映像を確認しながらオペレーターと会話することができる。

利用者:
Tシャツを買いたいです。
オペレーター:
分かりました。正面が赤、少し左が青です。
利用者:
サイズは何ですか?
オペレーター:
手元のTシャツのサイズはLです。
これは視覚障害者が店員に尋ねると、店員がどのように説明していいのか迷うことが多いという実体験から生まれたサービスだ。
視覚障害者が活動的で自立できる環境を
自身も視覚障害者である開発担当者のガムゼ・ソフオール氏は「私自身、常にWeWALKを使用しているため、問題点や改善が必要な箇所、将来的に技術実装すべき新機能の必要性を認識できます。これは私たちにとって非常に重要です」と話す。

さらに、ソフオール氏は「WeWALKは私に世界を変える機会を与えてくれる。視覚障害者にとって、より平等で活動的で自立した生活を提供したい」と語った。
【取材・執筆=フジテレビ イスタンブール支局 加藤崇】
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