メタのマーク・ザッカーバーグCEO=ロイター

【ニューヨーク=竹内弘文】30日の米株式市場でメタの株価が急落し、一時前日比14%安となった。29日の取引終了後に2025年12月期通期の設備投資額の見通しを上方修正し、26年はデータセンターなど人工知能(AI)インフラへの投資をさらに加速させる考えを表明した。過剰投資で将来の回収が難しくなるといった懸念や負債膨張への警戒感から株売りが優勢となっている。

米東部時間午前10時30分時点で、株価は前日終値より12%程度低い660ドル近辺で推移している。

メタが29日発表した25年7〜9月期決算は、純利益が前年同期比83%減の27億900万ドル(約4200億円)だった。約160億ドルにのぼる税務関連の一時費用を計上し、1株利益は1.05ドルと米ファクトセット集計の市場予想(6.72ドル)を下回った。

投資家の関心をより集めたのはAI関連投資のペースを加速させる姿勢だ。決算説明会でマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)はAIへの期待から「さらなる投資が必要だという確信を強めている」と述べた。スーザン・リー最高財務責任者(CFO)は26年の設備投資が「25年より著しく大きくなる」と語った。

一方でフリーキャッシュフロー(FCF、純現金収支)は巨額投資により急減速している。米バンク・オブ・アメリカのジャスティン・ポスト氏は「AI投資の成果が現れるまで待つ価値はある」と指摘し「買い推奨」を維持する一方、目標株価は810ドルと従来の900ドルから引き下げた。

30日取引開始前には米ブルームバーグ通信が「30日に合計250億ドル以上の社債を発行する」と報じたことも株価の重荷となっている。起債は複数の年限にまたがっており、40年債も含まれる見込みという。9月にオラクルが発行した180億ドルの社債を上回る起債規模だ。

メタなどハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)のAI巨額投資は今のところ、主に自社事業から生じる潤沢なキャッシュフローでまかなわれている。借金に依存しながら投資を加速していた2000年前後のITバブル期の危うい成長追求とは異なるとの見方はなお根強い。

ただ、足元で相次ぐ巨額起債は、投資原資の調達パターンが変化しつつある可能性も示唆する。AI投資の回収成果を早期に求める風潮が強まれば、米株相場をけん引してきた大手テック企業への企業価値評価が揺らぐ可能性がある。

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