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テーマが「愛の賛歌」だったフランスパビリオン=大阪市此花区、天野みすず撮影

振り返って

 今月13日に閉幕した大阪・関西万博。9月1日付で東京から大阪に転勤した記者は、1カ月あまりで計5回、取材で訪れた。短期間だったが、日本の市場価値を考える機会になった。

 厳しい残暑にも負けず、ミャクミャクグッズを身につけて万博を楽しむ多くの人たち――。東京ではわからなかった盛り上がりを肌で感じながら、いくつかのパビリオンを回った。

 フランスパビリオンは、ルイ・ヴィトンやディオールといったブランドを前面に押し出していたのが圧巻だった。ただ、一番気になったのは天井からつり下がる巨大なブドウのオブジェだった。

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フランスパビリオンの一室。天井から巨大なブドウのオブジェがつるされていた=大阪市此花区、天野みすず撮影

 「ワインの生産国らしいな」。壁を見ると「愛とアルザスワインほど、悩みを忘れさせてくれるのに良い方法はない」とあった。

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ブドウのオブジェのそばに刻まれていた格言=大阪市此花区、天野みすず撮影

 現地のアルザスワイン委員会によると、日本への輸出額は世界で6位、アジア太平洋地域ではトップ。日本は「強固で着実な成長を見せている市場」という。万博で存在感を増す狙いがあったようだ。

 隣国イタリアは州単位でプロモーションに訪れていた。北西部ピエモンテ州の催しでは高級赤ワイン「バローロ」や高級スパークリングワイン「アルタ・ランガ」を推していた。

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イタリア・ピエモンテ州の催しでは、州知事(右端)が「アルタ・ランガ」を紹介。「単なるアルコールではなく文化です」と話した=2025年10月3日、大阪市中央区、天野みすず撮影

 ワインだけではない。同州のトリノ工科大学は9月末、日本の大学などとの結びつきを深めるために研究拠点を東京に開設。航空宇宙工学に関連する展示をしていた。

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トリノ工科大学は10月、イタリアパビリオンに出展。オープニングセレモニーには学長も参加した=2025年10月2日、大阪市此花区、天野みすず撮影

 疑問がわいた。中国やインドのほうが市場は大きいのに、なぜ日本へ? 複数の州政府関係者に聞いた。「日本は一度関係ができあがると長続きする」「航空や自動車、バイオなどでのコラボレーションを期待している」。食への関心の高さや、トランプ関税の影響もあるようだった。

 最近では海外に出ると、インフレによる物価高に加え、円安が身にしみる。「日本の国力が落ちた」という声も聞こえてくる。でも、万博を通して一筋の光が見えたような気がした。

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