FRBはFSRで、金融機関や家計・企業などの資金の借り手の動向や市場の健全性を点検している=ロイター

【ニューヨーク=竹内弘文】米連邦準備理事会(FRB)は公表した金融安定性報告(FSR)で、ヘッジファンドのレバレッジ(リターンを高めるための負債活用)指標が過去最高水準に達したと明らかにした。運用リスクを高めたレバレッジ運用の拡大は相場急変時に損失を急拡大させ、金融システムを不安定にさせかねない。

FSRは年に2回公表し、金融機関や家計・企業などの資金の借り手の動向や市場の健全性を点検し、リスクを洗い出している。

FRBは、ヘッジファンドが米金融規制当局へ提出するデータをもとにレバレッジ指標を算出した。買い持ちと売り持ちの合計が純資産総額の何倍に相当するかを意味する「グロスレバレッジ」の中央値は10倍近くとなり、データが比較できる13年以降で最高となったという。

レバレッジ指標の上昇は、米国債や金利デリバティブ(金融派生商品)、株式などを対象とした幅広い運用戦略でみられた。特に、規模の大きなヘッジファンドほどレバレッジが高い傾向が継続しているという。高レバレッジ運用は、機械的なポジション解消や投げ売りを通じて相場変動を大きくする可能性がある。

4月にはヘッジファンドのレバレッジ活用がやや鈍ったとの報告もあるという。同月にはトランプ米大統領が相互関税を発表し、金融市場が混乱に陥った。FRBは「一部のヘッジファンドがレバレッジのポジションを解消した可能性がある」とみている。

今回のFSRでは、人工知能(AI)を活用した市場取引の普及についても言及した。生成AIの活用により、市場操縦がより簡単かつ巧妙になされる可能性があるという。同様のAIモデルに依拠した取引が増えることで、市場参加者が意図せずに他の市場参加者と共謀してしまうリスクも指摘した。

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