ASEANへの加盟調印式に臨んだ東ティモールのグスマン首相㊥と議長国マレーシアのアンワル首相㊧ら(10月26日、クアラルンプール)=ロイター

東南アジア諸国連合(ASEAN)の11番目のメンバーとして、西太平洋の小国・東ティモールが加盟した。1999年のカンボジア以来、新規加盟は26年ぶりだ。域内すべての国がそろったことは、地域共同体としてのASEANの存在感を高めるだろう。

米中新冷戦を背景に地政学情勢は緊迫する。大国間で中立的な立場を貫けるよう、ASEANはいま一度結束を固め直し、地域秩序の安定へとつなげてほしい。

正式加盟は10月末にマレーシアで開いた首脳会議で承認した。14年前に加盟申請して以来、義務を担うための体制づくりに取り組んできた。記念式典に出席したグスマン首相は「共に歩んでいく準備はできている」と語った。

同国は旧宗主国だったポルトガルの撤退後、インドネシアへ武力併合された。99年の住民投票で8割が分離・独立を支持し、2002年に独立国家となった。人口は140万人で、昨年の1人あたり国内総生産(GDP)は1450ドル(約22万円)にとどまる。

経済共同体への参画を通じ、石油・天然ガスに依存してきた経済構造の多角化を目指す。

ASEAN憲章は加盟要件を「地理的に東南アジアに位置すること」と定める。東ティモールの加盟は地域機構としての完成を意味する。実現まで時間はかかったものの、国際社会で分断が広がる時代に発展の遅れる小国を受け入れた包摂的な姿勢を評価したい。

ただ、今のASEANは内憂外患の厳しい状況に置かれる。

内部では軍事クーデター後のミャンマー内戦への対応に手をこまねき、タイとカンボジアの国境紛争も再燃する懸念がある。対外的にはトランプ米政権に高関税を課され、中国の覇権主義的な振る舞いも地域に影を落とす。

日本は東ティモール独立後の国連平和維持活動(PKO)に参加し、国づくりを手助けしてきた実績がある。新規加盟後も手厚い側面支援を続け、ASEANと共に地域安定へ貢献していきたい。

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