国連は22日、人道危機が続くパレスチナのガザ地区の北部ガザ市とその周辺で食料不足が深刻化し、「飢きん」が発生していると発表しました。

「飢きん」は、食料不足の程度を表す国際的な指標のうち、最も深刻な状況を示し、少なくとも20%の世帯が極端な食料不足に陥り、少なくとも30%の子どもが急性の栄養失調になっているなどと定義されています。

国連などは9月末までに、ガザ地区の中部や南部にも飢きんが拡大するおそれがあり、来年6月までに5歳未満の子ども少なくとも13万2000人が急性の栄養失調による死の危険にさらされるとしています。

飢きんはこれまで、アフリカのソマリアやスーダンなどで確認されましたが、中東で公式に確認されたのは、初めてだということです。

国連の人道部門のトップを務めるフレッチャー事務次長は記者会見で「これは防げたはずの飢きんだ。イスラエルによる組織的な妨害のために、ガザ地区の境界では食料が山積みになっている。一部のイスラエルの指導者が戦争の武器として公然と飢きんを助長している」と厳しく批判したうえで、即時の停戦と大規模な人道支援を訴えました。

WFP “すでに多くの人々が飢えで命を落としている”

「飢きん」は、国際的な指標で厳密に定義されていて、食料不足の程度が最も深刻な状況になったことを示します。

WFP=世界食糧計画によりますと、具体的には、少なくとも20%の世帯が極端な食料不足に陥っていることや、少なくとも30%の子どもが急性の栄養失調になっていること、それに人口1万人当たり2人以上が、毎日栄養不足などで死亡しているという、3つの条件がすべてそろったときに発表されます。

過去15年間では、アフリカのソマリアやスーダン、南スーダンで発表され、このうちスーダンでは現在も飢きんが続いています。

WFPは「飢きんはまれなものであり、予測可能で、適切な資源と政治的意思、行動を起こすことができれば防ぐことができる」としていて、これまでも繰り返し、ガザ地区に飢きんが差し迫っていると警告していました。

一方、飢きんが正式に宣言されるころには、すでに多くの人々が飢えで命を落としていて、その進行を食い止めるのは非常に困難になると指摘しています。

イスラエルが否定「ガザ地区に飢きんはない」

国連がガザ地区で「飢きん」が発生していると発表したことを受けて、イスラエル外務省が声明を出し、「ガザ地区に飢きんはない」と真っ向から否定しました。

そのうえで「イスラム組織ハマスが流すうその情報に基づくものだ。ガザ地区ではこの数週間に大量の支援物資が搬入され、食料価格は大きく下がっている」と主張しました。

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