米ハーバード大学(米ボストン郊外、5月)=遠藤啓生撮影

【ニューヨーク=西邨紘子】シンクタンクの米国際教育研究所(IIE)が17日公表した調査で、2025年秋学期の米大学への新規留学生が前年より17%減ったことが分かった。ビザ発給の厳格化や特定の国を対象とする渡航制限など、トランプ米政権による強硬な移民政策の影響が出た。

25年度の留学生受け入れ動向について、9月〜10月に大学や大学院など828校を調査した。全体のうち留学生が「減った」と答えた学校は57%だった。理由(複数回答)として、96%が「ビザ取得に関する懸念」、68%が「渡航制限」を挙げた。「(社会的に)歓迎されないという学生の懸念」も67%に上った。

在校生を含む留学生の総数は、前年比1%減と小幅な落ち込みだった。留学生全体では学部が2%増、大学院が12%減と差が開いた。

経済損失は11億ドルと試算

IIEが今回発表した調査では、84%の学校が今も留学生の招致を「優先事項」と位置づける。

IIEのデータによると、24〜25学年度の米国の高等教育機関への留学生は約113万人で、米学生全体の約6%を占めた。米国人学生と比べて留学生を対象とした奨学金は少なく、留学生の支払う学費は大学にとって重要な収入源だ。

調査でも留学生の重要性について、60%が「財政上の貢献」を挙げた。留学生のビザ問題への対応として、多数の大学が留学開始の時期を半年から1年遅らせる選択肢を示していた。

業界団体の国際教育者協会(NAFSA)はIIEの調査を受けて17日、25~26年度に留学生減少によって米国経済へ貢献が11億ドル(約1265億円)少なくなり、大学周辺などで2万3000人の雇用喪失につながるとの推定を発表した。同協会は、24~25年度の留学生による貢献を429億ドルと試算する。

米政権、留学生の入学制限を大学に提案

トランプ政権はかねてから、外国人留学生の受け入れ拡大が米国人学生の入学機会を奪っていると批判的してきた。留学生の受け入れ数を全学生の15%程度に制限するべきだと求めている。東海岸の有名校ハーバード大など、米国のトップ大学は学部生に加え研究者の留学も多く、留学生比率が高くなりがちだ。ハーバード大の24学年度の留学生比率は3割近くに上っている。

【関連記事】

  • ・米政権、留学生・報道関係者にビザ厳しく 監視強化に懸念広がる
  • ・米国務省、25年に学生ビザ計6000件取り消し 日本人も影響か

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。