
【ニューヨーク=秋田咲】国連安全保障理事会は17日、トランプ米大統領が示したパレスチナ自治区ガザの和平計画を支持する決議案を採択した。ガザの治安維持を担う国際安定化部隊の設置を承認した。ガザでの人道状況が悪化するなか、各国が早期の事態打開を重視した。
国連安保理15カ国のうち13か国が賛成した。反対は0票だった。ロシアと中国は棄権した。決議ではトランプ氏による20項目のガザ和平計画を支持し、国際安定化部隊の派遣を認めた。
米国のウォルツ国連大使は安保理で「今日の決議はガザの安定とイスラエルの安全な環境に向けた新たな重要な一歩となる」と話した。決議の終了後には記者団に「国連は傍観者ではなく平和のために存在できると証明した。パレスチナとイスラエルに永続的な平和への道筋を示した」と語った。
米国は国際安定化部隊について、国連安保理の承認を得ることで2026年1月までの設置を目指してきた。同部隊は、トランプ氏をトップとし暫定統治を主導する新たな国際機関「平和評議会」の下に置かれる見通しだ。少なくとも27年末まで活動しガザ地区の非武装化や統治を進めるとしている。
2年にわたりガザで戦闘を続けていたイスラエルとイスラム組織ハマスは10月に停戦した。ハマスは生存する人質の引き渡しなどを終え、トランプ氏は停戦合意の「第1段階」から「第2段階」に移行するとの意向を示してきた。「第2段階」は国際安定化部隊の派遣を柱とする。
国連によると、第2段階ではハマスの武装解除などのほか、平和評議会のもとで暫定的な統治機関を創設することなどが想定されている。26年までに任務部隊を展開することも予定する。規模は2万人程度となる見通しだ。
実際に国際安定化部隊の派遣が実現するかどうかは関係各国で思惑が交錯しており、一筋縄ではいかない可能性がある。米国はアラブ首長国連邦(UAE)やエジプト、トルコなど複数国に声をかけているものの、部隊の派遣が早期に実現するかには不透明さが残る。
トランプ氏は安保理での採択を受けて、自身のSNSに「私が議長を務める『平和評議会』を承認したことを祝福する。世界中の平和につながる歴史的な瞬間だ」と投稿した。
長引く戦闘でガザでは人道状況が悪化している。常任理事国の英国はガザにおいて妨げられない支援の実施と、死亡した人質の帰還確保などが必要だと強調した。フランスは「ガザ全域で即時かつ広範囲の人道支援の確保が今回の決議で追求される目的だ」との見方を示した。
ロシアと中国は拒否権を発動する可能性もあったものの、採決では棄権に回った。中東諸国などの意向に配慮したとの見方がある。中国は決議にあたり「平和評議会の構造と任務が曖昧だ」との懸念を表明した。ロシアは「(決議案は)パレスチナの主権と二国家解決を明確に支持していない」と批判した。
主要7カ国(G7)は11日に外相会合を開きガザ情勢について議論した。トランプ氏がまとめたガザの和平計画への支持を表明していた。安定化部隊については言及しなかったものの、外相の1人からは同部隊についても「各国が支持するだろう」との見方が出ていた。
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