ガザ地区では、イスラエルが陸路での支援物資の搬入を制限していて、7月末からは各国が輸送機を使って上空から物資を投下する活動を連日続けています。

ヨルダンの首都アンマン郊外にあるヨルダン空軍の基地では、21日午前、ヨルダン軍やオランダ軍など各国の輸送機が待機し、ドイツ軍の輸送機では物資の積み込み作業が行われていました。

コメやパスタ、牛乳、缶詰などの食料は輸送用の台の上にまとめられ、パラシュートをつけて投下されます。

1台当たりの重さは300キロから1トンあり、基地を飛び立った輸送機はイスラエルの許可のもとガザ地区の上空に入り、次々と物資を投下しました。

ただ、物資の投下は、ガザ地区の人たちの助けになる一方で、危険も伴います。

ガザ地区の当局によりますと、投下された物資が直撃したり、海に落ちた物資を取ろうとして溺れたりするなどして、これまでに23人が死亡し、124人がけがをしたとしています。

また、国連によりますと、トラックを使った場合と比較して、輸送機で届けられる物資の量ははるかに少ないということです。

ヨルダン政府のモマニ報道官は「上空からの物資の投下だけでは不十分で、解決策にはならない。少しでも深刻な状況を改善する助けになればというだけだ」と述べたうえで、陸路での円滑な物資の搬入に向けて国際社会はイスラエルに圧力をかけるべきだと訴えました。

投下された物資を激しく取り合う人々 物資が直撃する事故も

NHKが物資の積み込み作業を取材した輸送機は、ヨルダンの基地を飛び立ち、ガザ地区上空で物資を投下しました。

NHKガザ事務所のサラーム・アブタホン カメラマンは、中部ヌセイラトの近くで、これらの輸送機から投下された物資に集まる人たちの姿を撮影しました。

映像では、多くの男性や子どもたちが空を見上げてパラシュートの付いた物資の動きを確認しながら、落下地点を目指して走っていきました。

落下地点には大勢の住民が殺到し、住民たちが物資を激しく取り合い、大きな混乱が起きていて、そのさなかに左肩をナイフで傷つけられたという男性もいました。

大人たちが食料などを回収したあとには、子どもたちが地面にしゃがみこみ、こぼれ落ちた豆やパスタなどを拾い集めていました。

子どもの1人は「売れるように豆を拾っています」と話していました。

投下される物資は重いもので1トンほどもあり、物資が直撃して住民が死亡する事態も相次いでいて、この日も物資の1つが「ドン」という大きな音をたてて住宅の屋根に落ちていました。

その直後、住宅前の通りでは、男性が長い棒を振り回しながら、物資を手に入れようと集まった人たちを追い払おうとしていました。

物資を手にれることができなかったという男性は「10人家族ですが、きょうは何も入手できず、家には食料も水もありません。物資の投下は屈辱的で、住民を死に追いやっています」と話していました。

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