すべての人が、適切な保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる――。そんな状態を指すユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を世界中で達成するため、途上国を支援する拠点、「UHCナレッジハブ」が6日、東京で設立された。日本は約60年前に達成した「国民皆保険」の経験をベースに、必要な知見やノウハウを提供する。

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 「ナレッジハブ」は、世界銀行、世界保健機関(WHO)、日本政府が連携して創設。この日は、片山さつき財務相や上野賢一郎厚生労働相を含め、関係者約200人が参加するフォーラムが都内で開催された。

 WHOのテドロス事務局長は、UHCの最新動向について報告した。「良いニュースと悪いニュースがある」とし、保健医療サービスへのアクセスは25年前に比べて改善しているものの、ここ10年は明確に減速していると説明。いまだに世界の人口約80億人のうち、46億人が必要な保健サービスを受けられておらず、16億人が医療費負担のために貧困に陥っているなどのデータを引用しつつ、UHCの前進に必要な条件として「保健と財務当局の連携」などを挙げた。

 ビデオメッセージを寄せた高市早苗首相は「健康な労働力に支えられた良質な雇用と持続的な経済成長を実現するには、UHCの達成が不可欠」とし、「日本はハブのホスト国として、パートナーと緊密に連携しながら、その活動を力強く後押ししていく」と述べた。

 UHCの達成は、支払い能力の低い貧困層も保健サービスが使えるよう公的な財源を安定的に確保することがカギを握る。「ナレッジハブ」では最初の1年、アジアやアフリカの8カ国から、保健と財政の政策当局者を招き、各国の実情にあわせたシステム構築を支援する。

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