
【ソウル=小林恵理香】韓国の李在明(イ・ジェミョン)政権は大統領府を歴代大統領が執務してきた「青瓦台」に戻す。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が3年前に移転させた現大統領府は「非常戒厳」のイメージが残る。青瓦台への回帰で大統領府の印象改善を狙う。
大統領府は8日から職員が荷物をまとめて運び出す作業に入ったと明らかにした。今後、職員や記者会見場などを順次移し、業務に関連する施設は25日をめどに移転を完了させる見込みだ。
青瓦台はソウルの観光名所「景福宮」の北に位置する。ビルや住宅が立ち並ぶソウルの中心地、光化門(カンファムン)から特徴的な青い瓦屋根が見える。李承晩(イ・スンマン)初代大統領が官邸として使用してから70年以上の歴史を持つ。
現在の大統領府は竜山(ヨンサン)の国防省庁舎にある。尹氏は政権発足とほぼ同時の22年5月に移転を断行した。青瓦台を「帝王的権力の象徴」だと指摘し、移転することで大統領が持つ強大な権力の改革を打ち出す狙いがあった。青瓦台は一般公開され観光名所となっていた。
24年12月の非常戒厳宣言から1年がたち、尹政権関係者は軒並み逮捕・起訴され、裁判が進んでいる。尹氏が国防相ら側近と共謀して非常戒厳に踏み切った可能性も浮上しており、現庁舎には「非常戒厳の舞台」のイメージがついた。
李政権は大統領府を再び青瓦台に戻すため259億ウォン(およそ27億円)の予備費支出を決めた。韓国メディアは竜山への移転の際に800億ウォン費しており、費用は往復合わせて1300億ウォンにのぼると指摘する。
李氏の任期である30年までにさらに大統領府が移転する可能性もある。李政権は任期内に国会議事堂なども含めて首都機能をソウルから中部・世宗(セジョン)市へ移すと公約に掲げる。
現在、政府は世宗市に建設する予定の大統領府執務室は30年の工事完了を見込む。李氏は12日に世宗市を訪れた際、担当省庁にスケジュールの前倒しは可能かと尋ね、移転に前向きな姿勢を強調した。
世宗市にはすでに省庁の3分の2程度をソウルから移した。実際に大統領府や国会議事堂を対象にするには法改正を経る必要がある。実現までに乗り越えるべき課題は多い。
【関連記事】
- ・韓国株、「AI推し」の李在明相場で5割高 政治の不確実性和らぐ
- ・韓国海洋水産相が辞職へ 旧統一教会との癒着疑惑で
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。