
高市早苗首相の台湾有事をめぐる発言に中国がこれだけ強く反発する背景には、習近平(シー・ジンピン)国家主席の歴史観があるとの見方が少なくありません。1894〜95年の日清戦争に敗れた当時の清は、台湾を日本に割譲しました。習氏が台湾問題の起源は日清戦争にあると考えていてもおかしくありません。
中国史が専門の岡本隆司・早大教授はラジオNIKKEIのポッドキャスト番組「中国経済の真相」に出演し「日清戦争で日本に台湾を奪われたということと、中国が高市首相の発言にこれだけ強硬姿勢を取っているということが連関しているのは間違いない」との見解を示しました。
その一方で「台湾と日本は日清戦争だけでなく、それ以前から絡みがある」点にも目を向ける必要があると指摘しました。1874年に明治政府が台湾に軍を派遣した「台湾出兵」です。沖縄県になる前の琉球の漁民が台湾に漂着し、現地の先住民に殺された事件がきっかけでした。
習氏が日本の台湾出兵という史実を意識しているかどうかはわかりませんが、岡本氏は「台湾問題を考える場合には、そのあたりからの歴史を踏まえておかなければならない」と強調しました。
岡本氏によると、日本は中国にとって「歴史的に怖い存在」だそうです。古くは1590年代の豊臣秀吉による朝鮮出兵や、14世紀から16世紀にかけて猛威を振るった「倭寇(わこう)」と呼ばれる海賊集団に、中国の歴代王朝は悩まされてきました。近代以降には日清戦争、日中戦争で日本に攻め込まれた歴史もあります。
現代の日中対立を考えるうえでも、こうした歴史的な視点が欠かせないというのが岡本氏の主張です。日本からみると度を越した中国の強硬姿勢の背後に、日本を脅威に感じてきた「歴史の記憶」があるとすれば、日中対立の解消は簡単にいかないかもしれません。
岡本氏の解説は以下のポッドキャストでお聴きいただけます。
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(編集委員 高橋哲史)
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