
高市早苗首相と韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は13日、奈良市内で会談し、日韓両国の戦略上の連携を確認した。米大陸を軸とした「西半球」での利益を重視するトランプ米大統領の姿勢が一層鮮明になってきたことが背景にある。対米同盟の維持とアジアの同志国との協力を巡り日韓が共闘する構図になる。
首相は会談の冒頭、李氏とともに「日韓関係の戦略的重要性」への共通認識を持っていると強調した。李氏は「めまぐるしく変わっている国際秩序のなかで、より良い状況に向かい進展させないといけない」と語った。会談で首脳間のシャトル外交の継続も申し合わせた。
会談後の記者発表ではそろって日米韓による協力の重要性を口にした。3カ国の枠組みは北朝鮮や中国の軍備増強を念頭に置いており、共同訓練などを強化してきた。足元でこの関係に懸念が生じる。

トランプ氏が自身の名前の「ドナルド」と西半球から域外勢力を排除するモンロー主義を掛け合わせた「ドンロー主義」を掲げるからだ。年明けに南米ベネズエラを攻撃した。自国の国益を最重要視し、日本や韓国といった同盟国さえ関税政策で揺さぶり、一層の防衛費負担を求める。
米国が西半球に注力すれば、防衛コストが見合わないアジアを含む「東半球」への関与が減りかねないとの懸念があがる。半面、日本と韓国の周辺の安全保障環境は悪化し続けている。
北朝鮮は核・ミサイル開発をやめず、ウクライナ侵略を続けるロシアと軍事上の協力を強めている。中国は太平洋に進出する動きを一層強め、日本の南西諸島や小笠原諸島周辺の海域で空母を交えた軍事訓練を重ねる。
こうした環境を踏まえ、米国との同盟関係の維持を優先する必要性で両国の足並みはそろっている。米国のベネズエラ攻撃を巡っては両国とも民主主義の回復の重要性を強調しつつ、国際法違反とみるかどうかにあえて踏み込んでいない。
欧州の一部から米国の攻撃について国際法に違反しているとの指摘があがった。日韓は米国の行動への明確な反対を避け、同盟のつなぎ留めを優先している。

対中国でも両国に目立った溝はみられていない。
首相の台湾有事を巡る国会答弁を機に日中対立が深まり、中国は歴史問題で日本を攻撃する姿勢を強める。李氏が訪日に先立ち中国を訪問した際、習近平(シー・ジンピン)国家主席は李氏に対日政策での共闘を求めた。
李氏は中国側の立場に立たず「中立」を貫いた。記者発表では「韓中日3カ国が最大限の共通点を見つけ出し、共に意思疎通し協力する必要がある」と述べた。元慰安婦や元徴用工の問題には触れず、歴史問題で日本を攻撃する中国の姿勢とは一線を画した。
李氏は野党代表だった当時は日本について原発処理水や歴史問題などを巡り強硬な発言を繰り返していた。大統領就任後は国益を重視し各国と良好な関係を築く「実用外交」を掲げ、対日批判の発言は控えている。
日韓関係の火種は全くなくなったわけではない。
首相は25年の自民党総裁選の論戦で、毎年2月の「竹島の日」式典に閣僚が出席すべきだとの考えを示した。出席者を従来の政務官から閣僚に格上げすれば、韓国側で反発の声があがる恐れがある。
李政権は25年6月の発足以降、外交を中心に評価を集めて6割前後の支持率を保っている。過去には10年代の李明博(イ・ミョンバク)大統領のように、支持率が低下し反日政策に転じた例もあった。
日韓の互いに対する世論が悪化するようなことがあれば、良好な日韓関係が維持できなくなる。安保の本質と異なる問題で足をすくわれないよう、関係を管理する必要性が高まる。
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