軍政下でのミャンマー総選挙は自由・公正からほど遠かった(昨年12月28日、第1回投票が行われたヤンゴンの投票所)=小林健撮影

ミャンマーの軍事クーデターから5年がすぎた。主要な民主派を排除して実施した総選挙で国軍直系の政党が大勝し、軍事政権は「民選」を主張して支配の正当化を図る。だが恣意的な選挙でいまの混迷を脱することはできない。

国軍は2021年2月1日にアウンサンスーチー氏ら国民民主連盟(NLD)の政権幹部を拘束した。弾圧による死者はこれまで7700人を超え、反軍勢力の武装抵抗で内戦が泥沼化した。

治安悪化のなかで軍政は選挙を強行し、地域ごと3回に分けた投票で連邦団結発展党(USDP)が6割弱の議席を獲得した。非民選の軍人議員と合わせて9割近くを親軍派が占める国会は、3月にミンアウンフライン国軍総司令官を大統領に選出する見通しだ。

国軍はNLDが圧勝した20年の選挙で「大規模な不正があった」と言い募り、文民政権転覆の理由にした。今回の選挙はNLDを排除し、批判者は次々と逮捕するなど、自由・公正からほど遠い。

軍政監視下にもかかわらず投票率が55%と前回の72%から大幅に低下したのは、国民の反発の表れだ。見せかけの民政復帰で反軍勢力の抵抗はやまないだろう。

国際社会の反応は割れる。中国やロシアが選挙結果への支持を表明する一方、日本や欧州は承認しない姿勢を保つ。世界の分断が投影される状況を憂慮する。

スーチー氏の解放と対話を求めてきた日本は「政治的進展が実現していないのは遺憾」とする茂木敏充外相の談話を発表した。不透明な選挙の結果を受け入れないのは妥当だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)も現時点で結果を承認していない。軍政に暴力停止の働きかけを続けつつ、市民への人道支援に取り組む必要がある。

懸念されるのはトランプ政権下の米国の変節だ。国土安全保障省は「情勢が改善した」としてミャンマーからの避難者への一時保護を打ち切ると表明した。自国の移民制限が先にありきの身勝手としかみえず、容認できない。

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