ソウル中央地裁の近くで尹前大統領の無罪を訴える人々(19日)=共同

2024年12月に非常戒厳を宣言し内乱首謀罪に問われた韓国の尹錫悦前大統領に対し、ソウル中央地裁が無期懲役の判決を言い渡した。強権的手段で政敵の排除を試み、民主主義の基盤を揺るがした暴挙が断罪された。民主主義の価値を見つめ直す機会としたい。

地裁は、国会に軍を投入した行為が憲法秩序の破壊を目的とした暴動に当たるとし、刑法上の内乱罪が成立すると結論づけた。「民主主義の核心的価値を根本的に損なった」と厳しく非難した。

戒厳司令官の布告令は一切の政治活動を禁じ、メディアも統制する内容だった。一方で綿密さを欠く計画はほとんど失敗し、流血の事態も避けられた。こうした点などが考慮されて、求刑の死刑でなく無期懲役との判断になった。

非常戒厳について前大統領は、数で勝る当時の野党が国政をまひさせて国家が危機的状況にあると国民に伝えることが目的で「内乱ではない」と主張している。

政治空白が長期化し、国際社会で韓国の信用を低下させた代償は大きい。今回の厳刑は軍事独裁下での長い運動と多大な犠牲のうえに勝ち取った民主化の意義を知らしめた。国を問わず、政治リーダーは教訓を得るべきだろう。

歴代大統領はこの10年間だけでも李明博、朴槿恵両氏と合わせて3人が逮捕・収監された。国家元首の大統領に権力が集中する仕組みと頻繁な政権交代による政治報復の連鎖が温床になっている。

前大統領の支持勢力が判決に抗議し、弁護団は最後まで闘う立場を示したという。気がかりなのは非常戒厳を機に保守派と革新派の対立が先鋭化していることだ。

「実用外交」を掲げる李在明大統領が日本との関係でも前政権の進めた協調路線を踏襲しているのは評価できる。国内では前政権の関係者らに対し「内乱勢力を一掃する」と容赦ない。

就任時に「すべての国民に仕えるみんなの大統領になる」と述べた。社会の亀裂を修復し国民統合につなげる政治力に期待する。

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