イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖で原油価格は急騰した11日、(UAE沖の貨物船)=ロイター

トランプ米大統領がイランと停戦に向け協議していると述べた。真剣な対話で戦火の拡大を止める時だ。中東を揺るがし、世界経済を混乱させる戦闘を一日も早く終わらせなければならない。

米国とイスラエルがイランを先制攻撃して始まった戦闘は28日で1カ月。イランはエネルギー輸送の要衝ホルムズ海峡を事実上封鎖し、周辺アラブ産油国の石油・ガス生産施設に反撃した。

原油価格は急騰し、日本など国際エネルギー機関(IEA)加盟国は備蓄の協調放出を迫られた。石油化学製品や天然ガス、肥料も供給が滞り、物価高が懸念される。経済協力開発機構(OECD)は今年の20カ国・地域(G20)のインフレ率を4%とし、前回予測から1.2ポイント引き上げた。

交戦の当事国は、世界に大きな負担を強いていることを自覚すべきだ。国際法上の根拠を欠く攻撃で出口の見えない戦闘を始めた米イスラエルの浅慮にはあきれる。エネルギー供給を人質にとるイランの挙も許されない。

パキスタンが仲介する交渉で、米国はホルムズ海峡の開放や、核開発をしない確約などを求める15項目の計画を示したという。イランは海峡での主権を認めるよう求め、戦闘再発防止の確約も条件とした。隔たりは大きい。

トランプ政権が並行して米軍を中東に増派しているのが気がかりだ。強襲揚陸艦と海兵隊部隊を送り、空挺(くうてい)部隊も派遣すると報じられた。交渉は時間稼ぎとの見方がくすぶる。

これには既視感がある。2月にも米国はイランと核問題を巡る高官協議の傍ら、空母打撃群を中東に展開し、結局は戦端を開いた。交渉のさなかの不意打ちを繰り返せば、解決は遠のく。

地上戦は泥沼化と犠牲の拡大を招く。避けるべきだ。既にイランで1900人が死亡したと伝えられ、周辺のアラブ諸国やイスラエルでも複数が犠牲になっている。

イスラエルはイランの要人殺害で体制転換を狙い、米国と目的のズレが目立つ。パレスチナやレバノンで重ねたような過剰な武力行使は許されない。米国にはイスラエルに自制を迫る責務がある。

日本はエネルギーや石化製品などの供給不安を抑えるとともに、緊張緩和へバランスの取れた外交努力を尽くしてほしい。全当事国と関係を保つ国ならではの建設的な役割が期待される。

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