
米国とイスラエルによるイラン攻撃の着地点が見えてきません。トランプ米大統領は1日、米国民に向けて演説し「今後2〜3週間かけてイランを徹底的にたたきのめす」と述べ、軍事作戦の継続を宣言しました。中国の習近平(シー・ジンピン)政権は、長期化する中東での戦争をどう受け止めているのでしょうか。
経済産業研究所の呉軍華コンサルティングフェローはラジオNIKKEIのポッドキャスト番組「中国経済の真相」に出演し、米国の圧倒的な軍事力を見せつけられ「習政権は受け身の状況になっている」との考えを示しました。
トランプ氏が昨年1月の大統領就任後、中国に仕掛けた貿易戦争に、習政権はレアアース(希土類)などの戦略物資を武器に米国との戦いを有利に進めてきました。しかし、トランプ政権が今年1月のベネズエラに続き、イランという中国の友好国を攻撃し、状況は大きく変わっています。中国が米国に対し、劣勢になりつつあるというのが呉氏の見方です。
習政権は台湾政策を軌道修正している可能性もあります。呉氏が注目するのは台湾の最大野党、国民党の鄭麗文主席が決めた中国大陸訪問です。中国共産党の習総書記が招くかたちで、鄭氏は4月7〜12日に中国沿岸部の江蘇省や上海市、北京市を訪れます。
中国の人民解放軍は近年、「量」の面で米軍に急速に追いついていると言われてきました。しかし、米軍のイラン攻撃で明らかになったのは「質」の面で米軍との差はまだ大きいという事実です。習政権は現時点で台湾の武力統一は難しいとの判断を強めている可能性があり、あくまで平和的な統一をめざす姿勢を示すために「台湾政策を調整しているのではないか」と呉氏はみています。
習氏は5月14〜15日に訪中するトランプ氏と首脳会談を開く予定です。米国が計画している台湾への武器売却をなんとしてでも阻止したいと考えているはずですが、妙手はなく、焦りを深めているかもしれません。
一方、イランでの戦争が泥沼化すれば、米国は東アジアに関与する余裕がなくなる可能性があります。それは中国にとって有利な状況です。習氏は5月のトランプ氏との会談に向けて情勢を見極め、それがはっきりするまでは米国を刺激しない作戦をとっているようにもみえます。
呉氏の解説は以下のポッドキャストでお聴きいただけます。
「NIKKEIで深読み 中国経済の真相」番組サイトはこちら
高橋哲史編集委員のX(旧Twitter)アカウントをチェック
(編集委員 高橋哲史)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。