
【ワシントン=芦塚智子】米南部ルイジアナ州にある第5巡回区連邦控訴裁は2日、トランプ政権による「敵性外国人法」を使ったベネズエラ人不法移民の国外追放は違法とする判断を下した。同法による不法移民の移送を差し止めた。政権は上訴するとみられ、最終判断は最高裁に持ち込まれる可能性が高い。
敵性外国人法は1798年に制定された戦時法で、第2次大戦中に日系人の強制収容に利用された。トランプ大統領は3月、南米ベネズエラの犯罪組織「トレン・デ・アラグア」メンバーの不法移民らを迅速に国外追放するために同法を適用すると発表した。
控訴裁の判断は「この移民流入が武器を持ち、組織された軍隊であるとの結論はない」と指摘し、ベネズエラ人犯罪組織メンバーの国外追放に敵性外国人法は適用できないとした。他の法的権限を使った追放を妨げるものではないと付け加えた。
審理した3人の判事のうち共和党のブッシュ元大統領(第43代)と民主党のバイデン前大統領が指名した判事が判断を支持し、トランプ氏が指名した判事は反対した。
トランプ氏指名の判事は反対意見で、最高裁はこれまでに何度も大統領による「侵略」の宣言は最終判断であり、選挙で選ばれていない連邦判事が疑問を差し挟む権限はないと指摘してきたと主張。その上で「(多数派判事は)トランプ大統領をただの一般市民の訴訟当事者のようにあつかっている」と批判した。
最高裁は5月、敵性外国人法を使ったベネズエラ人不法移民の国外追放について当面差し止める命令を出した。敵性外国人法の適用の是非自体については判断せず、審理を控訴裁に差し戻していた。
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