Matej Kastelic -shutterstock-
<皇室の方々が降機されたあとの整然とした座席――そこには、他者への思いやりと美しい所作が息づいていた...「本物の一流」と「自称一流」を分ける、マナーの本質>
一流の人のマナーは何が違うか。
元JALのCAで研修コンサルタントの香山万由理さんは「一流と呼ばれるにふさわしい人徳と品格はマナーに表れる。一流企業にお勤めの方でもお食事のあとのトレイにゴミが山盛りだったら、公共の場を汚しても平気な人と思われてしまう。一方で、皇族の方が降機されたあとの状態をみて、改めて背筋が伸びる思いがした」という――。
※本稿は、香山万由理『仕事ができる人は、「人」のどこを見ているのか』(光文社)の一部を再編集したものです。
「本物の一流」と「自称一流」の見分けがつく「テーブルマナー」
仕事ができる人は、「食事のマナー」を見ている
世の中には、仕事でたくさんお金を稼いでいる人がいます。いわゆる成功者と呼ばれる人たちです。そういう人たちが真の意味で成功者なのかどうか、一流と呼ばれるにふさわしい人徳と品格を備えている存在なのかを見極めるポイントがあります。
そのポイントとは、「テーブルマナー」です。食事の様子を見れば、その人が「本物の一流」か「自称一流」かの違いがよくわかります。
なかでも食事をしているときの姿勢は重要です。首が前に出てしまっていたり、首を曲げてお皿に顔を近づけたりしていると、品位に欠けます。自覚のある方は、食事の際に意識して背筋を伸ばし、首をまっすぐにするようにしてみましょう。
姿勢とともに重要なのが、お箸の持ち方。あなたはお箸を正しく持てますか?
「自分らしく自由に」というのが今の風潮ですが、ことお箸に関しては、この言葉は当てはまりません。野球のバットやゴルフのクラブに正しい握り方があるように、一番効果的で無駄のないものが「型」「形」です。これを守らずして、何事も上達しません。
「箸の正しい使い方ができない」は大損
テレビで食レポをしているタレントさんのお箸の持ち方が正しくないと、残念に思います。いい大人になるまで、指摘されることがなかったのか、自分で直そうとしなかったのか。
いずれにしても、食事のマナーに対する意識が低い人だと見られてしまいます。本人の人格に関係なく、そう見られてしまうのは非常にもったいないことです。
あるお食事会で、参加者のひとりが、お箸をグーの手で握り、おかずにお箸を突き刺しているのを見ました。
その人自身はとても穏やかな良い人ですが、日本で生まれ育ち、手をケガしているわけでもないのに、この年齢になっても、お箸を正しく持てないことで、美意識が低いと思われます。お箸の持ち方に自信がない場合は、矯正することをおすすめします。
子どもがお箸を練習するグッズもありますので、小さな枝豆をお皿に移し替えるなどの方法で練習できます。
食事の際に気をつけるべき2つのポイント
人として、本物の品位や品格があれば、それは世界に通用する最高のマナーとなります。自分のことをたいせつに扱ってほしいと思うならば、食事のマナーを身につけることが必須です。
ただ、マナーといっても、教科書通りの正式なテーブルマナーを身につけよ、というのではなく、食事の際は次の2つのことに気をつけてほしいと思っています。
(1)人として品位が感じられる食べ方が身についていること
(2)お店のサービスをスマートに受け入れていること
肘をついて食べる、背中を丸めて食べる、足を組んで食べる、くちゃくちゃと音を立てて食べる、口内の咀嚼物が丸見えの状態でしゃべりながら食べる......これらには品位が感じられず、一緒に食事をする相手に不快な気分を味わわせてしまいます。
またお金を払っているのだから何をしても許されるだろう、と言わんばかりに、お店の人に横柄な態度をとるのは、マナー以前に人として問題があります。
お店での食事は、サービスをする側とサービスを受ける側の双方の働きかけが、食事の時間を楽しいものにするかどうかを決めます。
サービスをする側と受ける側の基本
生産者が心を込めて材料を作っていること、シェフがおいしいお料理を提供するために日々努力をしていること、スタッフが心地よい空間をつくろうとサービスしていることに対して、品位のある食べ方をしているか否かで、お店の人は自分たちがたいせつにされているかどうか感じ取ります。
サービスを受ける側のふるまいがあってこそ、お客さまへの心のこもったサービスにも表れてくるはずです。お互い感情を持つ生き物として、気持ちよく応対することが、サービスをする側と受ける側の基本だと考えます。
国際線に乗務しているとき、海外からのお客さまに感激されることがしばしばありました。「コーヒーのおかわりいかがでしょうか?」とお聞きしただけで、「エクセレント!」と返ってきたこともあります。
「いつもは別のエアラインに乗っているけど、今回初めてJALに乗った。何もかもが素晴らしい! これまでおかわりを聞いてもらったことなんてなかったし、やさしく、にこやかに接するクルーはいなかった。今度からJALに乗るよ!」
お客さまにこうおっしゃっていただけると、CA冥利に尽きます。
日本は世界トップクラスのサービス大国で、「当たり前」の基準が高いため、気づきにくいことかもしれませんが、人の心が動く瞬間というのは、こうしたほんのちょっとした心づかいなのだと感じたエピソードです。
ゴミとして捨てる食事後のお皿がきれいか
「立つ鳥跡を濁さず」、ということわざがあります。これは、去っていく者は、跡が見苦しくないように始末してから出立するのがよし、ということのたとえです。
国際線のお食事サービスが終わり、トレイをお下げするときに、きれいに整えて戻してくださるお客さまもいらっしゃれば、ぐちゃぐちゃのままのお客さまもいらっしゃいます。
どうせゴミとして捨てるんだから同じじゃないか、という考えももちろんありますが、やはりきれいに整えられているトレイは、CAも気持ちよく片付けることができます。
ビジネスクラスにお乗りだったお客さまのお話です。一流といわれる企業にお勤めの方でしたが、機内での過ごし方に驚きました。鼻をかんだティッシュを床にポイポイ落とし、読み終わった新聞紙を床に広げて踏んづけていたのです。
お食事のあとのトレイも、ゴミが山盛り。降機されたあとの席を見ると、ゴミが床に散乱していて、シートの間にも食べかすなどが挟まっていました。これでは、公共の場を汚しても平気な人と思われても仕方がありません。
ちなみに、皇族の方が降機されたあとは、ピシーッとシートベルトが元の位置に戻っていて、ゴミひとつなく、お乗りになる前の状態に整えられていました。改めて背筋が伸びる思いがしたのを覚えています。
仕事ができる人のポイント
他人からたいせつに扱われる人は、品位品格を身につけている
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