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<完璧ではなく「十分な」親を目指すべき──多くの母親が抱える自己疑念の正体を紐解けば、罪悪感から解放される>

育児の専門家で臨床心理士のベッキー・ケネディ博士(Dr. Becky Kennedy)は、多くの母親が抱える深刻な自己疑念は、現代の育児による副産物ではなく「学習された思い込み」だと語る。そしてそれは、捨て去ることができるとも指摘する。

【動画】臨床心理士が伝授する「母親の罪悪感(マミーギルト)」から解放される方法

作家でライフコーチのジェイ・シェティ(Jay Shetty)によるポッドキャスト番組『On Purpose』に出演したケネディ博士(SNS上では「Dr. Becky」として知られる)は、「マミーギルト(母親の罪悪感)」について率直に語った。それは道徳的失敗ではなく、「ある種のシグナル」だという。

それは視点を変えて受け取れば、より健全な行動パターンへと導くヒントになる。

「罪悪感は自分自身の価値観を裏切った、という脳からのサインであることが多い」とケネディ氏は語る。「でも実際には、それが自分の価値観ではなく『他人の期待』を裏切っただけの場合もある。そこはまったく別の話」

グローバルな育児・メンタルヘルスプラットフォーム「グッド・インサイド(Good Inside)」の創設者でもあるケネディ氏は、現代において「育児はかつてないほどパブリックなものになっている」と語り、多くの母親が常に「裁かれている」と感じている現状に警鐘を鳴らす。

SNSは他者との比較をあおり、社会に根付いた「理想の母親像」は達成不可能な基準を押しつけてくる。その結果、たとえ日々の育児をうまくやっていても、母親たちは常に自己批判の声にさらされている。

「一度立ち止まって『この罪悪感は自分の価値観から来ているのか、それとも他人のものか』と問いかけてみてほしい」とケネディ氏は語る。「自分の価値観に基づくものであれば、罪悪感は前向きな変化につながる。でも、他人の価値観によるものであれば、それはただの雑音にすぎない」

職場のメンタルヘルスに関する専門資格を持ち、母親のメンタルヘルスに関する大学院課程も修了しているクリスティーナ・ミューラー氏(Christina Muller)は、ケネディ氏のこの区別が非常に重要だと本誌に語っている。

「職場のメンタルヘルス専門家であり、母親でもある立場から、『マミーギルト』というものを実際に何度も目にしてきた」とミューラー氏は語る。

「この感情は単なるラベルではなく、社会的な理想と現実の育児との間にあるギャップから生まれることが多い。現代はつながりが希薄になりつつも、同時に過剰につながりすぎているからこそ、衝突が起きやすい」

さらにミューラー氏は、こうした感情の混乱の多くが、「質」よりも「パフォーマンス」を重視する傾向に原因があると指摘する。

「家庭でも職場でも、どこで働いていようと『つながりの瞬間』は必ず生まれるし、それは長く心に残るものになる」と彼女は語る。「私たちはこれまで以上に多くのボールを同時に投げている。でも、決して落とすことのないボールこそが、本当に大切なものなんだ」

ケネディ氏とミューラー氏の両者は、過去数十年にわたる愛着理論の研究を引用し、「子どもが健やかに育つために必要なのは『十分に良い親』である」ことだと強調する。

それは、常に完璧というわけではなく、「たいていの場合、そばにいて、気持ちを汲み取り、適切に応答できる」養育者の存在を意味する。

「他の分野では完璧を求めないのに、母親に対してはなぜか完璧を求めてしまう」とミューラー氏は語る。「『すべてを手に入れる』ことはできる。でも、それをすべて同時に、同じ場所で成し遂げることはできない。その現実について、もっと語るべきだと思う」

臨床の視点から見ると、「マミーギルト」が長く続く背景には、完璧主義的な傾向や、ミューラー氏が「パフォーマンス優先思考」と呼ぶものがあるという。つまり「どれだけこなしたか」で自分を測る一方、「そこにちゃんと『いる』ことの質」には目を向けにくいという問題だ。

健全な自己内省は、自己批判ではなく「好奇心」から始まるとミューラー氏は述べ、「いま、自分はどうすれば『ここにいる』ことができるか」と問いかける姿勢が大切だと指摘する。

具体的な対処法としては、「白か黒か」で考える思考パターンを見直すこと、価値観に沿った行動をとること、そして子ども主導の『小さくても一貫したつながりの時間』を日々積み重ねていくことが効果的だと助言している。

「子どもに主導権を渡して、好きな活動や話題を選ばせ、それを途中で遮らずに付き合ってみてほしい」とミューラー氏は語る。

こうした時間が、子どもの自立心を育み、親子の絆を強め、長期的な感情のコントロール能力の発達にもつながることは、複数の研究から明らかになっているという。

またミューラー氏は「セルフケアは、良い育児をするために欠かせない基盤」だと強調する。「子どもに時間とエネルギーを投資し続ければ、長期的には必ずリターンが返ってくる。でも、それと同じように『配当の一部』を自分自身にも再投資するべきだと思う」

ベッキー・ケネディ博士が語る「マミーギルト」との向き合い方

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