現役引退の意向を表明したレスリング女子日本代表の金城(旧性・川井)梨紗子(30、サントリー)が12日、静岡県焼津市で行われた全日本女子オープン選手権の会場で取材に応じ、「去年の世界選手権で“ママでの世界一”を達成することができて、レスリング選手として幸せなことを経験し尽くしたなって自分で思えたので。趣味がレスリングでいい人生かなと思い、発表させてもらいました」と引退発表の理由を話した。

金城は前日11日夜に自身のインスタグラムを更新し、「明日は(妹の)友香子の復帰戦です。そして私は現役を引退する決意をしました。詳しくは明日、試合終了後にお話しさせていただきます。」と投稿し、現役引退の意向を伝えていた。

この日は妹の恒村(旧性・川井)友香子(28、サントリー)が今年3月に出産後、初めて実戦に復帰。女子フリースタイル59kg級(シニアの部)に出場し、姉・梨紗子がセコンドに入った。試合前は妹に水を差し出すなどサポートし、試合中は常に大きな声でアドバイスを送り続けた。1回戦を逆転で突破すると、準々決勝では西岡吟(東洋大)に6-0で勝利。だが準決勝では木村美海(日体大柏)に1-4で敗れ、決勝進出は叶わず。試合後は、金城が復帰戦を終えた妹を笑顔で労う姿もみられた。

試合後の取材には姉妹で応じ、金城は東京五輪後に一度競技から離れていた時期を振り返った。「私の中のプランで言ったら東京オリンピック優勝して、綺麗な辞め時かなってずっと思って、家族だったり、近い人にはオリンピックが終わったらもう辞めますと話してはいたんですけど」と振り返り、「(第1子の)妊娠期間中に自分だけの体じゃなくなったときに、レスリングやりたくてウズウズしてしまって。友香子が私が妊娠中に試合に出たりとかそういうのを近くで見たり、その他の同じ私の階級の選手の試合も見て、自分だったらこうするのになとか、何かもっと自分はできるのになってちょっと思ったことがあって」と復帰に至るまでの気持ちを口にした。

東京五輪では“姉妹で金”の快挙も!

「なので(第1子が)生まれたら(レスリング)やろうって思い始めたのがきっかけで、でも負けて終わるのがすごく昔から嫌で、結果パリの予選は負けてしまったんですけれど。やっぱり今まで“ママで世界一”っていうのは、まだ日本で誰も成し遂げたことがないので、それができたら理想だなって。去年の10月の世界選手権のときに、それを達成することができて、終わったときにもう何か欲しいものがないなというか、オリンピック2回、世界選手権が4回(世界一を)取って、姉妹でその内1回は(2人で金メダル)っていう、レスリング選手として幸せなことを経験し尽くしたなって自分で思えたので。私はもうレスリング選手として、欲しいものがもうなく満たされたなという気持ちが。趣味がレスリングでいい人生かなと思い、発表させてもらいました」と胸の内を明かした。

また、この日の囲み取材では第2子の妊娠中であることも明かし、「今8か月で子供が2人になるので、まずそこの育児をしっかりまた頑張りたいのと、子供を育てながらなんですが、友香子のコーチにもなることになってるので、コーチをしながらレスリングにはずっと関わっていきたいなと思っています」と今後について話した。

金城は2016年リオ五輪、2021年東京五輪と2大会連続で金メダルを獲得。レスリング教室を開いていた両親の影響で10歳でレスリングを始め、2013年に憧れの吉田沙保里、伊調馨が在籍した至学館大学へ進学。大学4年でリオ五輪に初出場し、女子63キロ級で金メダルを獲得した。

2019年には、五輪4連覇のレジェンド・伊調馨と激しい代表争いを制して東京五輪の切符を獲得。2年後に開催された東京五輪女子57キロ級で金メダルを獲得し連覇を達成した。同大会では妹の友香子も62キロ級で優勝、姉妹で金メダルの快挙となった。

■金城梨紗子(きんじょう・りさこ)
1994年11月21日生まれ。石川県津幡町出身。2016年リオ五輪レスリング女子63キロ級で金メダル。2021年東京五輪女子57キロ級で金メダル。妹・友香子も東京五輪62キロ級で金メダルを獲得し「姉妹で金」を達成した。2021年8月に結婚し、2022年5月に第1子となる女児を出産。その後も競技を続け、2024年の世界選手権女子59キロ級で金メダル、母でも世界一に輝いた。

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