年末年始に東大阪市の花園ラグビー場で開催される「第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会」。若きラガーマンたちの聖地を目指す熱い戦いがいよいよ始まりました。9月に行われた北海道大会に続いて、先週末には、岩手、宮城、山形で決勝戦が行われて、それぞれの代表校が決定しています。
<盛岡工業vs黒沢尻北>試合開始からがっぷり四つの展開に
10月18日(土)、岩手県盛岡市のいわぎんスタジアムで行われた岩手県大会の決勝は、連覇を狙う盛岡工業と、3大会ぶりの花園出場を目指す黒沢尻北の対戦。新チーム結成時の段階から、県内では決勝で激突して接戦を演じてきた両チームの対戦は、予想どおりのがっぷり四つの展開となります。
前半、先にペースをつかんだのは黒沢尻北でした。試合開始から持ち味の走力と接点での強さを生かして敵陣深くまで攻め込むと、前半6分、素早くボールを動かしながら最後はHO・佐々木大志選手がトライし5点をリードします。
一方の盛岡工業も反撃を開始します。激しい雨と風の中、キックを上手く使って黒沢尻北陣内に攻め込むと、相手のキックをチャージしたSH・齊藤紹央選手が、そのままトライエリアでボールをおさえてトライ。ゴールも決めて7対5と逆転します。
それでも、5月に行われた県高校総体では、後半で盛岡工を突き放して勝利している黒沢尻北は慌てず反撃します。再びボールを動かしながら敵陣深くまで攻め込むと、キックパスを上手く使って一気にト
ライラインに迫ります。最後は、SH・福原岳選手がディフェンスのギャップを巧みについて左中間にトライ。12対7と再逆転に成功しました。
しかし、盛岡工業も譲りません。持ち味のFW陣の力強さを生かしてじわりじわりと攻め込むと、28分には、NO8・佐藤羽駈選手が密集サイドを上手くついて左隅にトライ。難しい角度のゴールも鮮やかに決めて14対12、再び2点のリードを奪って前半を折り返しました。
「雨も風もすべてが味方してくれた」盛岡工業が聖地花園へ
2点差で突入した後半は、両チームの勝利への執念がぶつかり合います。
降りしきる雨と風の中で肉弾戦を繰り広げる両チーム。逆転を狙って果敢に仕掛ける黒沢尻北に対して、盛岡工業は全員がよく前に出て、大きなチャンスをつくらせません。
キャプテンの晴澤勇天選手が「雨も風もすべてが味方してくれた。最後まで自分たちがやるべきことを貫くことができた」と話したように、最後まで集中力の切れない激しいディフェンスで黒沢尻北に得点を許しませんでした。
試合は14対12のまま、ついにノーサイド。小原義巧監督が「手に汗握る熱戦に思わず立ち上がってしまった。選手たちが本当によく体を張ってくれた」と語った盛岡工業。伝統校の底力をみせて、2年連続37回目の花園への出場を果たしました。
<仙台育英vs佐沼>4年連続で同じ顔合わせの決勝に
翌日の10月19日(日)に行われた宮城県大会決勝は、大会29連覇中の仙台育英と公立高校の佐沼という4年連続で同じ顔合わせとなりました。
前半、先にチャンスをつかんだのは佐沼でした。立ち上がりの仙台育英の攻撃をしっかりとしたディフェンスで跳ね返すと、5分過ぎからは仙台育英を自陣の22mラインの内側まで押し込んで攻めたてます。
しかし、仙台育英の分厚いディフェンスの前に、なかなかトライラインに迫ることができません。逆に仙台育英は10分、攻め込んだチャンスを確実にものにします。敵陣22mライン付近のラインアウトから、FW陣がモールをつくって一気に押し込むと、そこから素早く左に展開して、最後はFB・若松健選手がトライ。ゴールも決めて7対0とリードします。
FWとBKが一体となった狙いどおりのトライで先制した仙台育英、このあと勢いに乗って着実に得点を加えていきます。持ち味のスピードある攻撃で15分、19分、21分と立て続けにトライ、26対0と大きくリードを奪いました。
一方の佐沼の反撃は22分。キャプテンのCTB・鹿野人和選手が、自陣の深い位置からでも展開しようとした仙台育英のミスを見逃しませんでした。こぼれ球に素早く反応してそのままトライ。ゴールもきめて26対7と追い上げます。
この後も、仙台育英のBK陣に対して早めにプレッシャーをかけるディフェンスで活路を見出そうとする佐沼。しかし、仙台育英の選手たちは、冷静でした。BK陣が早めに上がってくる佐沼の裏のスペースをついてSO・和田晴澄選手が絶妙な位置にボールを蹴りこみ、これに反応したWTB・小池桜賀選手が、佐沼のディフェンス陣より早くボールを拾い上げて、そのまま左隅にトライ。佐沼の狙いを逆手に取った鮮やかな攻撃で31対7として、再び試合の流れを引き寄せました。
驚異の粘りみせる佐沼を振り切った仙台育英が全国の切符掴む
後半に入っても、仙台育英の勢いは止まりません。後半最初のトライこそ佐沼に奪われますが、落ち着いて反撃にでると、5分、10分、15分と再び3連続トライ。52対12として、勝負の行方を決定づけました。
残り時間15分で41点差。それでも佐沼の選手たちは、最後まで諦めませんでした。キャプテンの鹿野選手が「最後まで、泥臭く前を向く佐沼らしいラグビーができた」と振りかえったとように、点差が開く中でも集中力を保って反撃を試みます。
粘り強く攻撃を継続して21分にPR・佐々木開地選手が追撃のトライを奪うと、試合終了間際の29分とロスタイムに突入した32分にもトライを追加。執念の3連続トライで懸命の追い上げをみせますが、反撃もここまで。驚異の粘りもあと一歩及びませんでした。
終わってみれば52対33と、仙台育英が今年度の大会も佐沼の挑戦を跳ね返し、30年連続の全国大会出場です。
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