来年3月に開催されるセンバツ高校野球大会の出場校を選考するうえで、重要な参考材料になる秋の高校野球各地区大会もいよいよ大詰め。11月1日(土)から3日(月)にかけての3連休では、九州、中国、近畿でそれぞれ決勝戦が行われ、明治神宮大会で日本一を争う代表校が決定しました。

中国大会:高川学園vs崇徳 序盤から試合の主導権を握ったのは崇徳

 11月2日(日)に行われた中国大会決勝は、下関国際(山口)との前日の準決勝を大接戦の末に勝ち抜いた高川学園(山口)と、倉敷商(岡山)にコールド勝ちを収めた崇徳(広島)の対戦。

 中国地区の選抜大会の出場枠は2(優勝校が明治神宮大会を制覇すれば3)。選抜大会への出場を大きく左右する大一番の準決勝で見せた両チームの勢いの差が、そのまま決勝戦に表れます。

 先制したのは、準決勝で終盤に打線が爆発して大勝した崇徳。この試合も序盤から積極的なバッティングで高川学園の先発・木下瑛二投手に襲い掛かります。2回に2本のヒットとワイルドピッチで1アウト2塁・3塁のチャンスをつくると、7番・寺西功一選手のセカンドゴロの間に1点。さらに8番・徳丸凜空投手のタイムリー内野安打で幸先よく2点をリードします。

 一方、準決勝では、打線がなかなかつながらない中、木下投手の全身のバネを使った力強い投球で、粘る下関国際を振り切った高川学園。この日も序盤の1回、2回はランナーを出しながらも、あと1本が出ずなかなか得点に結びつけることができません。頼みの木下投手も、前日の疲労もあってか、この日は細かいコントロールがいまひとつで、甘く入ったところを崇徳打線に狙われてしまいます。3回には、崇徳の主将、1番・新村瑠聖選手のツーベースヒットを足掛かりに1点、4回にも足を絡めた攻撃で1点を奪われて4対0と大きくリードを許してしまいました。

「丁寧に先頭バッターを抑えること心掛けた」頼もしいバッテリーが躍動した崇徳が中国大会制覇

 ならば、打線の奮起に期待がかかりますが、回を重ねるごとに調子を上げていく崇徳・徳丸投手の前に、3回以降はチャンスすらつくることができません。

 崇徳のキャッチャーを務める新村主将が「とにかく、丁寧に先頭バッターを確実に抑えること心掛けた」というように、高川学園の先頭打者の出塁はゼロ。3回以降は、内外角を巧みに投げ分ける徳丸投手にわずか1安打に抑え込まれてしまいます。

 逆に崇徳は、7回にも、木下投手に変わって5回途中から登板した松笠陽平投手から1点を奪って5対0と、投打ともに安定感抜群の強さをみせて、最後まで高川学園に付け入るスキを与えませんでした。

 新村主将が「OBの方々の想いも背負って戦っていた。目標が達成できて嬉しい」と語ると「周囲の方々の支えがあってここまでくることができた。個人的には、今年の夏の選手権予選であとアウト一つが取れずに、(広陵に)逆転された経験が、どんな時でも気持ちにぶれがない投球につながっている」と話した徳丸投手。準々決勝から3試合連続の完封勝ちの崇徳。名門校が頼もしいバッテリーと共に、みごとな戦いぶりで33年ぶり3回目の中国大会制覇です。

近畿大会:神戸国際大付vs智弁学園 序盤から互いに得点重ねる展開に

 翌日の11月3日には近畿大会の決勝戦。タイトルと明治神宮大会への出場権がかかった大事な一戦が行われました。

 強豪校がひしめく近畿地区の中で、決勝の舞台に駒を進めてきたのは、準決勝で優勝候補の大阪桐蔭(大阪)に7対1で快勝するなど、強力投手陣と勝負強い打撃で危なげなく勝ち上がってきた神戸国際大付(兵庫)と1回戦から近大付(大阪)、東洋大姫路(兵庫)、滋賀学園(滋賀)と実力校に競り勝ってきた智弁学園(奈良)。

 ともに、この大会の優勝経験をもつ両チームの対決は、序盤から大きく試合が動きます。1回表、智弁学園が、神戸国際大付のエース・秋田依吹投手をとらえて2点を先制すると、その裏、神戸国際大付もすかさず反撃。立ち上がりで制球に苦しむ智弁学園の先発・高井周平投手から、連続ヒットで2アウト2塁・3塁のチャンスをつくると、そこから2本のヒットと4つの四死球、さらには智弁学園の守備の乱れもあって一挙6得点。打者12人の猛攻で一気に試合をひっくり返します。

 しかし、さすがは智弁学園。2回から登板した水口亮明投手が、ストライク先行の落ち着いたピッチングで神戸国際大付の勢いを食い止めると、3回には打線が奮起します。

 神戸国際大付の2人目・豊岡速伍投手から7番・大西蓮太郎選手、9番・水口亮明投手のタイムリーなどこの回4安打を集中して4得点。序盤で6対6の同点に追いつきました。

 ここからは、一転して決勝戦らしい緊迫のゲーム展開。3回以降も水口投手がテンポのいいピッチングで神戸国際大付打線を抑え込むと、神戸国際大付も、3人目の橋本大智投手が力投。ランナーを出しながらも智弁学園に得点を許しません。

「チーム全員の勝利です」神戸国際大付属が激戦を制し16年ぶり3回目の優勝

 6対6のまま、試合は終盤の8回に突入します。7回に水口投手がはじめてのピンチを招いた智弁学園は、8回からエース・杉本真滉投手を投入。背番号「1」のプライドに勝負を託します。杉本投手は、期待に応えて簡単にツーアウトを取りますが、ここから神戸国際大付が驚異の勝負強さを発揮します。8番・井本康太選手が、しぶとくライト前へのヒットで出塁すると、9番に入っていた橋本大智投手が、左中間を深々と破る値千金のタイムリースリーベースヒット。神戸国際大付の青木尚龍監督も「思わずびっくりした」という一撃で、再び7対6とリードを奪いました。

 それでも、差はわずかに1点。9回表、智弁学園も懸命の粘りを見せます。連続三振で2アウトとなってから、7番・大西選手が右中間を破るスリーベースヒットを放ち、一打が出れば同点の場面をつくります。橋本投手の切れ味鋭い変化球に必死に食らいつく8番の八木颯人選手。しかし、最後は橋本投手の渾身の投球の前に空振り三振でゲームセット。青木監督が「本当に感無量です」と話すと、井本主将も「厳しい練習を積み重ねてきた努力が報われた。チーム全員の勝利です」と応えた神戸国際大付属。激戦が続いた近畿大会で勝負強さとしたたかさを発揮して、見事に16年ぶり3回目の優勝を飾りました。

九州大会:九州国際大付vs長崎日大 9回の土壇場での逆転劇

 その他の地区、中国大会、近畿大会に先立つ11月1日(土)には九州で決勝戦が行われ、九州国際大付(福岡)が、長崎日大(長崎)を逆転で下して、4年ぶり2回目の秋の九州大会優勝を果たしました。

 前日の準決勝では、準々決勝で今年の夏の選手権大会を制した沖縄尚学(沖縄)を下した神村学園(鹿児島)との熱戦をものにした九州国際大付。この試合は、長崎日大のエース・古賀友樹投手の角度のあるストレートと落差十分の変化球に苦しみます。7回までわずか1安打、なかなかチャンスをつくることができません。

 それでも、岩見輝晟選手、渡辺流選手とつないだ投手陣が、粘り強い投球で再三のピンチをしのいで7回まで2失点。長崎日大に大量点を許さず、なんとか2点のビハインドで終盤に突入します。

 打線が投手陣の踏ん張りに応えたのは8回。7番・上岡煌選手、8番・渡辺流選手のこの試合はじめての連続ヒットでノーアウト1塁・3塁のチャンスをつくると、9番・柴原奈旺芙選手のショートゴロの間に上岡選手の代走・小山田伊吹選手がホームインし、ようやく1点を返しました。

 さらに渡辺投手が8回裏のピンチをしのぐと、9回には1アウト2塁から4番・城野慶太選手がライトへのタイムリーヒットを放って土壇場で2対2の同点に追いつきます。こうなると試合の流れは九州国際大付へ。この後長崎日大の守備の乱れもあって1アウト満塁とチャンスをひろげると、ピンチヒッターの鰐口拓時選手がセンターへの犠牲フライ。ついに3対2と勝ち越しました。

 その裏、長崎日大も2アウト1塁2塁と詰め寄りますが、最後もエースナンバーを背負った渡辺投手が冷静な投球で内野フライに打ち取ってゲームセット。九州国際大付が、粘る長崎日大を振り切り4年ぶりに秋の九州大会を制覇して、明治神宮大会への出場権を手にしました。

 各地区の結果は、以下のとおり。優勝校は、11月14日(水)から神宮球場で秋の高校野球日本一をかけて明治神宮野球大会を戦います。

 これで出場10校のうち、9地区の代表校が決定した明治神宮大会。最後の1校、東京地区の代表校は、11月8日(土)に国士舘対帝京、関東一対桜美林による準決勝が行われた後、翌日の11月9日(日)に予定されている決勝戦で決定します。

▼各地区大会 結果

近畿大会 神戸国際大兵庫(1位) 7-6 智弁学園(奈良1位)
中国大会 崇徳(広島2位) 5-0 高川学園(山口4位)
九州大会 九州国際大付(福岡1位) 3-2 長崎日大(長崎1位)
  
【明治神宮大会各地区代表校】
北海道 北照
東北 花巻東
関東 山梨学院
東京 11月9日に決定
北信越 帝京長岡
東海 中京大中京
近畿 神戸国際大付
中国 崇徳
四国 英明
九州 九州国際大付

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