
フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦のNHK杯は7日、大阪・東和薬品ラクタブドームで開幕し、各種目のショートプログラム(SP)があった。女子は坂本花織(シスメックス)が77.05点で首位発進した。青木祐奈(MFアカデミー)は56.72点で9位、樋口新葉(わかば)(ノエビア)は53.15点で10位だった。
男子は鍵山優真(オリエンタルバイオ・中京大)が98.58点で首位に立った。佐藤駿(エームサービス・明大)は2位につけ、垣内珀琉(はる)(ひょうご西宮FSC)は12位。ペアは長岡柚奈、森口澄士(すみただ)組(木下アカデミー)が4位。
アイスダンスはリズムダンス(RD)があり、2018年平昌オリンピック(五輪)以来の実戦となった日系米国人のマイア、アレックス・シブタニ組(米)は6位、吉田唄菜(うたな)、森田真沙也組(木下アカデミー)は8位だった。
8日には各種目のフリーがある。
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愛する地元で、坂本輝く
大会直前、坂本はいつも落ち着かなくなる。今回も、前日からこの日の昼にかけて極度の緊張に襲われていた。
「いつも通り緊張してんな」。認めた上で、受け入れようというのが坂本流だ。「よしよし」「まあ、ご飯はのど通らんけど」。頭の中でそんな会話を繰り返した。本番のリンクに立った時、心はもう静かだった。
「たぶん緊張し疲れて、落ち着いた」
全ての要素でGOE(出来栄え点)の加点を積み上げた。見せ場の柔らかいステップは、2位のサモデルキナが「感動して泣いてしまいそう」とたたえる出来だった。
神戸市出身の坂本は10日ほど前、兵庫県尼崎市であった全兵庫選手権に出場した。会場のロビーでは、中学時代の担任と7年ぶりに再会。演技直前、リンクではおいっ子の泣き声が聞こえた。「どこを見ても知っている顔だった」
全兵庫は、何か先につながる大会ではない。それでも毎年欠かさずに出ている。近しい人たちに「見てもらいたいから」。それだけ地元への愛着は深い。
大阪でのNHK杯出場は2回目。2020年の時は優勝したが、コロナ下でほぼ日本勢だけの変則的な大会だった。
今季限りでの引退を決めている坂本にとっては、最初で最後の地元関西での「正式な」GP。この日も、パッと見た観客席に知り合いを見つけた。優勝を届けたい。

佐藤、鬼門でも SP2位
鬼門の大阪で、佐藤が好スタートを切った。冒頭の4回転ルッツは回転不足の判定だったが、こらえた。残りのジャンプは成功させ「全日本の感じだったら転倒していたと思う」。
昨年12月、同じ会場で行われた全日本選手権は「苦しすぎた」記憶だ。フリーはジャンプで2回転倒するなど大きく崩れ、総合7位。演技後は過呼吸のような状態に陥った。
今回、会場に足を踏み入れた時は「ちょっと思い出したけど、演技に集中しようと思った」。本番は抱えている右足の痛みも感じないほどプログラムに入り込んだ。シーズンベストの高得点に、「フリーを笑顔で締めくくれれば払拭(ふっしょく)できたことになるのかな」と朗らかに言った。

シブタニ兄妹、笑顔の復帰戦
シブタニ兄妹が、復帰戦でエネルギーあふれるアイスダンスの演技を披露した。実戦のリンクに立ったのは7年ぶり。この種目ではアジア系初の表彰台となる銅メダルに輝いた、2018年平昌オリンピック(五輪)以来だった。自己ベストの79.18点には遠いが、2人が生まれた1990年代の曲で構成されたプログラムで71.74点をマークし納得の表情。休みをとっていた19年に腎臓がんの手術を受け、完治したという31歳の妹マイアは「日系米国人として世界をつなぐ架け橋的な存在になれているのはうれしい。日本で演技できるのはいつも光栄なこと」と笑顔で語った。34歳のアレックスも「復帰によって、たくさんの前向きなインパクトを与えていきたい」。
男子首位の鍵山 珍しくスピンでミスし100点に届かず。「ジャンプは落ち着きながら、何とか耐えながらできた。何とか切り替えていきたい」
ペアのSP4位の森口 自己ベストを5.25点更新。「70点超えは一つの大きな目標だった。練習してきた、良い調子のものがたくさん出せた」
アイスダンスRD8位の吉田 カナダから帰国の際、荷物が届かず4日間滑れず。腰痛もあるが、「ハプニング続きでも自己ベストに近い点数が出せたのは自信になる」。
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