年末年始に東大阪市の花園ラグビー場で開催される全国高校ラグビーフットボール大会。続々と代表校が決定する中、聖地を目指す戦いも、一段と激しさを増しています。11月8日(土)、9日(日)には、兵庫、京都、東京といった全国注目の対決含む14の地区で決勝戦が行われ、それぞれ代表校が決定しました。
【兵庫大会】関西学院が「徹」のスローガンのもと徹底した戦いぶりで報徳学園を撃破

11月8日(土)に行われた兵庫大会決勝は、大会5連覇を目指す報徳学園と関西学院高等部の7年連続のライバル対決となりました。序盤から去年の大会で報徳学園に敗れた悔しさを知る3年生が奮起した関西学院がペースを握ります。
持ち味の低く鋭く前に出るディフェンスで報徳の攻撃を寸断すると、自陣からでもキックを使わず徹底的にボールをつないでいくラグビーで攻撃を継続していきます。試合開始直後の3分に、キャプテンのCTB・西浦章博選手がPGに成功して3点を先制すると、18分にはFW陣の執拗な連続攻撃からPR・丸山颯平選手がトライ。ゴールも決めて10対0とリードしました。
一方、規律が乱れてペナルティーから関学にチャンスを与えてしまった報徳学園はその後も大事なところでペナルティーを重ね、リズムに乗ることができません。

逆に関学は24分、自陣から粘り強くボールをつないで報徳のディフェンスを揺さぶると、高校日本代表候補にも選出されているSO・木山仁平選手が巧みにスペースをついて、一気にトライラインに迫ります。最後はLO・松山莉空選手が力強い突進で左中間にトライ。15対0とリードをさらにひろげました。
それでもまだ前半、報徳も王者の意地をみせて反撃を試みます。縦に強い選手を中心に、じわりじわりと前進していくと、前半終了間際には関学陣内のトライラインまであとわずかまで攻め込みます。
しかし、ここでも関学が素晴らしい集中力と規律の高さをみせました。FWで力攻めにくる報徳に対して、反則を犯さず粘り強いディフェンスで得点を許しません。
関学の安藤昌宏監督が「前半にペナルティーを犯さなかったこと、攻撃でのミスが少なかったことが大きかった」と振り返ったように、トライラインを背にしながらも、全員がしっかりと前に出てペナルティーを犯さずピンチを脱出しました。
こうなると、関学の勢いは止まりません。懸命に反撃を試みる報徳に対して、後半に入っても、全員がハードワークを続けて思い切って前に出るディフェンスで、大きなチャンスをつくらせませんでした。
そして後半13分、WTB・岸本結選手が後ろ向きでハイパントをキャッチしてからカウンター攻撃を仕掛けると、BK陣の巧みな連携で報徳陳内深くまで攻め込み最後はHO黒田鉄二選手からパスを受けたPR根木健太郎選手が中央にトライ、ゴールも決めて22対0として、勝負を決定づけました。
この後の報徳学園の反撃を1トライに抑えた関学は、試合終了間際にも1トライを加えて29対7で勝利しました。

西浦主将が「今年1年間、アタックでもディフェンスでも徹底して前に出続けるということを掲げてやってきた。それを60分間、徹してやり続けることができたことが勝因」と語ったように、今年のチームのスローガンに掲げた「徹」の言葉どおり、自分たちの戦いを最後まで徹底して遂行してライバル報徳学園に快勝し、見事に5年ぶり8回目の全国大会出場を決めました。
【京都大会】京都成章が“ピラニアタックル”で京都工学院にリベンジ

11月9日(日)には、全国注目の対決、京都成章と京都工学院による京都大会決勝戦が行われました。
春の選抜大会をはじめ全国の舞台でも結果を残してきた両チームによる11年連続の対決。あいにくの雨の中始まったこの試合は、序盤はキックを使って慎重にエリアを取り合う展開となります。
京都成章がSO・岡元聡志選手の絶妙の距離に落ちるキックと連動するBK陣でプレッシャーをかけようとすると、京都工学院はSO・杉山祐太朗選手の伸びるキックでエリアを回復するなど一進一退の攻防の中、あっという間に15分が経過します。

試合が動いたのは17分、それまでキックでエリアを戻していた岡元選手が、京都工学院ディフェンスのギャップを見つけると、迷いなくカウンター攻撃を仕掛けます。自陣から巧みなランニングで京都工学院の陣内に入り込むと、その動きに呼応したFB・春藤大翔選手が一気に敵陣深くまで攻め込みます。最後は、NO8・南川祐樹選手がタッチライン際を快走して右隅にトライ。難しい角度のゴールをCTB・森岡悠良選手が見事に決めて7点をリードしました。
京都成章は、さらに22分、ピラニアタックルの異名をもつ持ち味の全員が突き刺さるように飛び込んでくるタックルからチャンスをものにします。成章のはやいプレッシャーに、京都工学院が自陣でパスミスを犯すとこのボールに全員が即座に反応します。
CTB・森岡選手が鋭く強烈なタックルで工学院からボールを奪うと、そこから素早く展開して最後はWTB・尾関仁選手が左隅にトライ。さらに森岡選手が今度は左隅の難しい角度からのゴールを鮮やかに決めて14対0とリードをひろげました。
森岡選手が「練習で何回も何回もやってきた形この試合で出せてよかった」と振り返った貴重なトライ。京都成章が、積み重ねてきた努力を大一番で発揮しました。
一方、あっという間に2本のトライを許した京都工学院は、それでも慌てず反撃します。直後のキックオフから京都成章に圧力をかけると、タッチに逃れようとした岡元選手のキックをLO・飯田匡亮選手がチャージし、トライエリアにこぼれたボールをSH・片岡湊志選手が押さえてトライ。14対5とようやく1トライを返しました。
しかし、追い上げたのも束の間、直後のキックオフから思わぬ形で失点してしまいます。今度は杉山選手がタッチに逃れようとしたキックを、京都成章のSH・佐藤啓護選手にチャージされてそのまま佐藤選手がトライ。瞬く間に19対5と再びリードをひろげられてしまいました。
京都工学院の大島淳史監督が「成章さんの去年の(リベンジを果たすという)思いが、我々の想定していたものよりも一つしぶとく、一つ激しかった。そのことが、我々が試合を上手く運べなかったことにつながってしまった」と話すと「見えない角度から、凄いスピードでチャージに来られた」と杉山選手が振り返った一撃。このトライが、京都工学院に傾きかけていた試合の流れを、再び京都成章に引き戻しました。
これで再び14点差とした京都成章は、後半に入ってもキックを上手く使いながら、鋭い出足と強烈なタックルで京都工学院を自陣に押し込んでいきます。京都工学院の粘りのまえに得点こそ奪えないものの、チャンスをつくらせず時間を費やしていきます。
そして、後半の14分、敵陣中央で京都工学院のペナルティーを誘発すると、森岡選手が落ち着いてPGに成功。22対5として、逆転には3チャンス以上が必要な17点に差を拡げました。
ゲームキャプテンを務めたLO・土肥祐斗選手や、攻撃をリードしたSO岡元選手が「練習中に怪我をして、この大会には出場できないキャプテンの笹岡空翔選手を花園に連れて行こうというみんなの思いが、チームを一つにして、3年生一人一人の自覚や責任感につながった」と話した京都成章。
この後、魂の粘りを見せる京都工学院に1トライを許したものの、最後まで全員が勝利への執念をみせて走り切りました。見事に22対12でライバルを振り切って、2大会ぶり17度目の花園への出場権獲得です。
「今年負けたら終わりだと思っていた。1年間成章のディフェンスを取り戻そうと日々やってきた成果が出た。生徒たちが本当によくやってくれた。花園では60分間しっかりと戦い続けることができるチームをつくって日本一を狙いたい」と話した京都成章・関崎大輔監督。
一方、2年生の選手たちを集めて、喜びに浸る京都成章の選手たちを目に焼きつけさせていた京都工学院の大島淳史監督。全国屈指のライバル対決は、今年も次の世代へと続くドラマを残して幕を閉じました。
【東京大会】早稲田実業が東京との接戦を制して2大会ぶりの復活
そのほかの、11月8日(土)、9日(日)に行われた各都道県大会決勝の結果は以下のとおり。
東京第2地区では、早稲田実業が東京との接戦を制して、2大会ぶり9回目の全国大会出場を決めました。前回大会は、決勝で国学院久我山に敗れて聖地への切符を逃した早稲田実業。雪辱に燃える選手たちが、試合開始から力を発揮します。
開始2分に早実らしい相手の守備のほころびつく狙いどおりの攻撃で先制トライを奪うと、さらに2つのトライを加えて17対0とリードします。
しかし東京も反撃。前半のうちに1トライを返すと、再び27対10とされた後半15分過ぎから伝統校の底力を発揮して気迫の連続トライ。27対22とワンチャンスで逆転可能な5点差まで詰め寄ります。
攻める東京としのぐ早実。手に汗握る攻防が続きますが、最後は、早実の勝利への執念が勝りました。
キャプテンのFB・河村和樹選手がすさまじいスピードでプレッシャーをかけて東京のミスを誘い、ついにノーサイド。27対22で逃げ切った早稲田実業、大熱戦を制して2大会ぶりの花園です。
【岐阜大会】岐阜聖徳学園が嬉しい初出場
岐阜では、岐阜聖徳学園が伝統校の厚い壁をついに打ち破りました。
関商工と岐阜工の2強時代が続いていた岐阜大会。関商工との決勝戦では、岐阜聖徳学園が前半からペースを握ります。試合開始直後にFL・林飛輝選手のトライで先制すると、前半のうちに3トライを奪って21対7とリードします。
後半、関商工の追い上げに一時は4点差まで詰め寄られますが、最後はCTB・奥野虎翔選手が左隅に飛び込んで、粘る関商工を突き放しました。創部22年目で悲願の花園初出場です。
今週末、11月15日(土)、16日(日)に行われる決勝戦は22地区。
2校出場の神奈川、埼玉、福岡、3校出場の大阪のほか、奈良、長崎などで強豪同士の激突による注目の決勝戦がおこなわれます。
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