16日の神戸マラソンに福井市から参加した今中悟央(のりたか)さん(52)は9月に登山中の滑落事故に遭ったものの、完走した。「100点満点の達成感です」と笑顔で語った。
2013年に40歳を過ぎて初めてマラソンに挑戦した。妻と2男1女の家族に「お父さんすごい」と言われたかったのが理由だ。15年には金沢マラソンを走り3時間台でゴール。達成感に酔い、火がついた。
旅行好きも高じ、全国各地のご当地マラソンに参加するようになった。地元のランニングチームに所属し、年に10回は出走。家族にもっと「すごい」と言われたくて100キロを走るウルトラマラソンへの挑戦も始めた。サロマ湖、八ケ岳、四万十、沖縄を次々に走った。24年に始まったふくい桜マラソンでは、第1回、第2回大会で4時間のペースを先導するランナーも務めている。
記録にもこだわる。今年3月の東京マラソンで自己ベストの3時間3分をマーク。神戸マラソンで念願のサブスリー(3時間切り)を狙った。しかし9月、岐阜と長野にまたがる西穂高岳で5メートルの崖から滑落。岩の斜面を転げ落ち、骨折こそしなかったが首や足が大きく腫れた。
そこから驚異的な回復力を見せる。けがを治し、十分なトレーニングが積めない代わりに、ウルトラマラソンとフルマラソンに出走。荒療治で神戸マラソン出走にこぎ着けた。記録は3時間9分。37キロ過ぎに転倒したことを考えても好タイムだった。
2回目の参加となった神戸は因縁の土地でもある。結婚式の4日前に阪神・淡路大震災が起きた。当時は陸上自衛官。式と披露宴は開くことができたが、新婚旅行は取りやめた。神戸市の東灘区と長田区に入って道をふさぐがれきを撤去し、被災者のための仮設浴場を設置した。
完走後、今中さんは「被災当時の神戸に思いをはせながら走れた。来年3月の東京マラソンで、サブスリーを達成します」と語った。
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