[つなぐ!NAHAマラソン]

 12月7日開催の太陽と海とジョガーの祭典「第39回NAHAマラソン」まで1週間余り。今は亡き友人をきっかけに出場を決めた人や最高齢出場者などそれぞれの思いを持って走るジョガーに意気込みを聞いた。さらに、演奏や給水で大会を支える生徒などNAHAマラソンには欠かせないボランティアを紹介する。(社会部・西平光葉)

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悔いのない人生に 亡き友に背中押され初挑戦

比屋根忠さん(55)

笑顔の比屋根忠さん(左)と生前の長嶺由直さん(左から4人目)ら幼なじみ6人=2024年5月、那覇市内(提供)

 うるま市の比屋根忠さん(55)はNAHAマラソンに初めて挑戦する。きっかけは、昨年12月に友人の長嶺由直さんが亡くなったことだった。多趣味でギターやゴルフなどいろんな世界に引き込んでくれた。「人はいつ亡くなるか誰にも分からない。後悔を残さないために今できることは挑戦しよう」。そう決めた。

 小・中学校が同じ2人を含む幼なじみ6人は社会人になった後も、サッカーをしたり一緒にお酒を飲んだり交流を続け、30歳ごろからは模合で定期的に集まった。ある時、長嶺さんから病を告げられた。明るい性格の長嶺さんは闘病中も気丈に振る舞った。2024年12月、55歳で生涯を閉じた。

NAHAマラソンに初挑戦する比屋根忠さん=23日、うるま市宮里

 死後、旅好きだった長嶺さんが次に予定していた旅行先が長野県の上高地だと知り、幼なじみ5人で2泊3日で訪れた。「それぞれが形見を持って行った。みんなの中では彼も一緒にいるようだった」と振り返る。

 友人の死は、「いつかは死ぬが今じゃないだろう」と思っていた比屋根さんを変えた。悔いが残らないよう、興味があることには何にでも挑戦しようと決めた。20代から参加したかったNAHAマラソンに次男の元太さん(25)を誘って親子で出場する。

 現在は、本番に向けて仕事と両立しながらランニングに取り組んでいる。「制限時間内の完走は難しいかもしれない。それでも最後までやり切って後悔は残さない」と力を込めた。

吹奏楽で走者にエール

チーム「ちゅらサウンド2025」

NAHAマラソンを演奏で盛り上げる「ちゅらサウンド2025」のメンバーら=9日、那覇市古島の興南中学・高校

 那覇市の興南中学・高校の吹奏楽部や神原中学校などの6校でつくる吹奏楽チーム「ちゅらサウンド2025」の総勢66人は昨年に引き続き、与儀公園の沿道で先頭ランナーから後方ランナーが過ぎ去るまで演奏し、出場者にエールを送る。

 近年、多くの学校が吹奏楽部員の減少によって活動を縮小しているという。生徒たちに演奏の機会を持ってもらおうと興南の吹奏楽部顧問を務める眞榮城吉孝さん(62)と普久原楽器の髙里広昭さん(63)が発起人となり、3年前から近隣校同士の合同練習を始めた。毎年参加校を変えながら練習や地域イベントで演奏している。

 高校野球の応援に憧れて入部した井川創太さん(17)=興南高3年=は「応援の魅力は一体感が生まれること。入部当時は部員が2人だけだったが、今では年が離れた部員も一緒に仲良く活動している。みんなで大きなイベントを盛り上げたい」と意気込んだ。

 仲村公助さん(16)=同1年=は「自分のソロパートがある『できっこないをやらなくちゃ』の演奏が楽しみ。聴いている人が笑顔になるように明るく演奏したい」と笑顔を見せた。

給水所で元気を注入

金城中の生徒160人

ボランティアとして大会を支える那覇市立金城中学校の生徒と久保田照子さん(2列目右)=19日、同校

 ボランティアとして20回目の参加となる那覇市立金城中学校の生徒約160人は来賓客へのお茶出しや給水所でランナーを支える。第1回大会からボランティアを続けている久保田照子さん(85)の呼びかけによって実現し、現在まで続いている。

 神谷祐永さん(14)=同校3年=は昨年に引き続き立候補した。「ランナーからの『ありがとう』や『助かる』の感謝の言葉がうれしかった」と振り返った。

 新城萌々香さん(14)=同=は「前回は緊張しながらお客さんにお茶を出したのが思い出。当日は笑顔を意識したい」と意気込んだ。

 初めて参加する岡本育己さん(15)=同=は「地域の人との交流が楽しみ。ランナーが元気になるように頑張りたい」と笑顔を見せた。

 久保田さんは「子どもたちにはボランティアを通してあいさつの大切さや相手のために行動する精神を学んでもらいたい。大会のたびに子どもたちが成長する姿を見てきた。長年協力してくれて本当にありがたい」と感謝した。

外国人ランナー支援

県ボランティア通訳友の会

「言葉以上にサポートしたいという気持ちや行動が大事」と語る県ボランティア通訳友の会の上田尚史会長=19日、中城村南上原

 県ボランティア通訳友の会は大会当日、外国人ランナーの誘導や案内、体調不良やけがなどのトラブル発生時の通訳で運営を支える。

 同会は、30年以上前から通訳ボランティアとしてNAHAマラソンに参加してきた。本大会では約15人のメンバーが英語・中国語・韓国語を中心に通訳する。上田尚史会長は「大会にはいちゃりばちょーでーの精神で外国人を受け入れる沖縄らしい温かい雰囲気が流れている。ボランティアの醍醐味(だいごみ)は人との出会いや誰かの役に立てること」と語った。

 外国人ランナーの増加に伴って、通訳ボランティアの需要は高まっている。上田会長は「言葉以上に大切なのは笑顔や受け入れる気持ち。高い語学力がなくとも身ぶり手ぶりでサポートはできる。少しでも通訳ボランティアに興味を持つ人が増えてほしい」と話した。

孫と一緒に楽しく 88歳 全参加者で最高齢

高橋ユミさん

「孫と一緒に走るのが楽しみ」と話す最高齢ランナーの高橋ユミさん(提供)

 全参加者の中で最高齢の高橋ユミさん(88)=宮城県名取市=は「新しいことに挑戦するのが好き。笑い話の種としてやってみよう」と人生で初めてのフルマラソンに出場する。

 転勤によって沖縄で暮らす息子一家が参加すると聞き、せっかくなら一緒に出ようと参加を決めた。

 20年以上勤めた給食調理の仕事を60歳で退職してからは、ウオーキングや旅行などの趣味に打ち込む日々を送っている。2024年には、思い立って四国のお遍路を4回に分けて巡った。「退職直後は家で何もしない時間もあって、それでは駄目だと散歩から始めた。自分の足で歩いておいしいものを食べる今の生活に幸せを感じる」と話した。

 本番に向けて、毎日午前6時から1時間半のウオーキングを日課にしている。「孫と一緒に走るのが何よりも楽しみ。最初で最後のマラソンへの挑戦なので、歩いてでもいいから全力を尽くしたい」と力を込めた。

仕事や育児と両立 楽しく走るを目標に

倉岡麻乃さん(32)

「本大会の目標は楽しむこと」と話す倉岡麻乃さん(左)と李桃ちゃん=19日、那覇市の奥武山公園

 那覇市の倉岡麻乃さん(32)は2015年の初出場以降、仕事や育児と両立しながらマラソンを続けている。

 「ライフステージが変わっても人生は自分が主体。ダイエット目的で始めたマラソンが今では生活を整える大切な時間になっている。これからの10年も継続したい」と語る。

 7月に長女の李桃ちゃんを出産し、1男1女の子育てに奮闘する日々。本大会は、楽しく走ることを目標に体調と相談しながら練習を重ねている。

本番に向けてランニングを欠かさない倉岡麻乃さん=19日、那覇市の奥武山公園

 夫の弁慶さん(45)と家事を分担し、早朝に走りに出るのが日課だ。

 音楽を聴いたり、考え事をしたり。ランニングの時間は麻乃さんにとってメンタルを整える時間になっている。

 大会に向けて「沿道応援が楽しみ。毎回たくさんの知り合いが声をかけてくれるので、元気に駆け抜けたい」と意気込んだ。

参加者の写真販売 タイムス公式サイト

「写真パラダイス」で販売する写真のサンプル

 沖縄タイムス社は第39回NAHAマラソンで撮影した参加者の写真を沖縄タイムス公式サイト内の「写真パラダイス」で販売する。大会当日の12月7日から。

 撮影スポットは(1)スタート(2)久茂地交差点~県庁前(3)国際通り(御菓子御殿、おきなわ屋付近)(4)嘉数交差点付近(YMCA)(5)東風平交差点(伊覇公民館)(6)サトウキビ畑(7)具志頭交差点(8)中間地点(9)名城ビーチ付近(10)糸満ロータリー(11)赤嶺駅(12)ゴール。

 自身のゼッケンで検索し、お気に入りの写真を注文できる。写真の大きさは2L、A4、A3を選べる他、大会の新聞記事の中に購入した写真を埋め込むことも可能。大会翌日紙面と完走者名簿紙面が付いた商品も販売する。

 さらにトリミングや自分の記録や名前などを写真に文字入力することもできる。

 支払いはクレジットカード、コンビニ決済。閲覧は無料。購入はこちら(https://okinawa.epitas.com/events/3122/landing_pages/666)から。

写真パラダイスでは、第38回NAHAマラソンに参加したジョガーの写真約42万枚を公開中!ぜひご覧ください。

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