SoftBank ウインターカップ2025が12月23日におこなわれ、会場の一つである京王アリーナの男子1回戦、埼玉代表・正智深谷高校と静岡代表・浜松学院興誠高校との一戦は第4Qまで目が離せない大熱戦となった。
怪我から復帰したキャプテン加藤駿選手(3年生)を中心に、守備から作り上げる堅固なバスケットを展開した正智深谷が87-78で浜松学院興誠を振り切り、2回戦進出を決めた。
勝利した正智深谷高校 この記事の写真は10枚エースの復帰と2年生ビッグマンの躍動
試合の火ぶたを切ったのは、やはりこの男だった。けが明けのエース、正智深谷の加藤選手は試合開始直後の表情には硬さがみられたが「シュート以外の部分でも魅せる」という言葉通り、オープニングのディフェンスリバウンドをもぎ取り、チームに勢いをもたらす。
先制点は2年生のビッグマン、大木来唄選手(2年生)だ。浜松学院興誠の留学生、オビオラ・チディンドゥ・クリスティーン選手(1年生)に対し、臆することなく1on1を仕掛けてゴールをこじ開けた。
正智深谷の大木来唄選手(2年生)このオフェンスを皮切りに、正智深谷は本来の形である強固なディフェンスからのアーリーオフェンスを展開。
順調に得点を重ねリードする正智深谷だったが、浜松学院興誠のエース西垣玲央選手(3年生)に2連続でミドルジャンパーを沈められてしまう。
浜松学院興誠の西垣玲央選手(3年生)西垣選手の活躍で浜松学院興誠に傾きかけた流れを正智深谷に呼び戻したのが、山口哲平選手(3年生)のプレーだ。山口選手は、鋭いインサイドへの「スラッシュ」から、浜松のディフェンス越しにタフなレイアップをねじ込んだ。
正智深谷の山口哲平選手(3年生)正智深谷が22点を奪い、5点をリードして第1Qを終えた。
西垣の爆発 浜松興誠が逆転
第2Qに入ると、正智深谷は早船哉斗選手(3年生)と山口選手のホットラインが躍動する。マークが厳しくなり攻めあぐねる加藤選手に代わり、山口選手が鋭いドライブで再びディフェンスを切り裂けば、早船選手も呼応して得点を重ねる。加藤選手も要所で得意のミドルジャンパーを沈めた。
正智深谷の早船哉斗選手(3年生)と成田靖監督だが、正智深谷は浜松学院興誠の反撃を受けてしまう。浜松学院興誠の西垣選手が3ポイントを決めると、勢いに乗った西垣選手に正智深谷のディフェンスは切り裂かれ、次々と得点を奪われてしまう。
正智深谷は、浜松学院興誠の主軸・西垣選手の爆発により残り時間10秒を切ったところ逆転され、38-39と1点のリードを奪われて、勝負の後半へ突入する。
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ハーフタイムを挟んだ第3Qでも、正智深谷は防戦一方だった。浜松学院興誠の勢いを止められず、リードを一時12点まで広げられ、窮地に立たされる。
この悪い流れに抗ったのが山口選手だ。
正智深谷の山口哲平選手(3年生)鋭いドライブを一閃させると、エース加藤選手も得意のミドルジャンパーで続く。猛追する正智深谷の前に立ちはだかったのは、浜松学院興誠のルーキー・薗部良助選手(1年生)だ。正智深谷は、薗部選手にゴール下での執拗なシュートとリバウンドでインサイドを制圧され、主導権を奪い返せない時間が続いた。
この閉塞感を打破したのは、成田靖監督が加藤選手と共に「二枚看板」に掲げる早船選手だった。
正智深谷の早船哉斗選手(3年生)アイソレーションから強引にこじ開けると、ピックアンドロールから連続得点。怒涛の勢いで点差を縮めていく。
一方、厳しいマークに遭い思うように動けない加藤選手は、自身の役割を「得点」から「守備」へとシフトする。
「ディフェンスから試合を作っていく」。その言葉通り、鬼気迫るディフェンスでチームを鼓舞し、キャプテンとしての背中を見せ続けた。
正智深谷は、早船選手の活躍と加藤選手の献身的プレーにより、57-62と5点差に詰め寄った。
運命の最終ピリオドへ。
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第4Q、正智深谷の堅固なディフェンスが機能し始める。
早船選手の得点で3点差。ここから一瞬も瞬きができないシーソーゲームが展開された。
正智深谷は、浜松学院興誠・末永蒼選手(3年生)にミドルジャンパーを沈められたりするが、山口選手がスラッシュからのバスケットカウント(エンドワン)で応戦し、ついに1点差に迫る(64-65)。
正智深谷は、その直後に浜松学院興誠・根岸凌央選手(3年生)に3ポイントを許すが、山口選手が得意のドライブで食らいつく(66-68)。
ひときわ厳しいマークを受ける深谷正智のエース加藤選手は、声と背中でチームを牽引し続ける。
正智深谷の富澤龍一郎選手(1年生)その想いに応えたのは、1年生の富澤龍一郎選手だった。値千金の3ポイントを沈め、再び1点差(69-70)と肉薄した状況が続く。
その直後のディフェンスでは、浜松学院興誠の攻撃を加藤選手がブロックショットで叩き落とし
加藤がブロックショットで叩き落とし、気迫でゴールを割らせない。その後も続く浜松の猛攻をチーム全員でしのぎ切ると、ボールを受けた山口が一気に敵陣へ。ついに正智深谷が逆転に成功する(71 - 70)。
畳み掛ける正智深谷は、試合を決める早船選手の3ポイントがリングを射抜く。さらにルーキー富澤選手が冷静にフローターを沈め、4点差にリードを広げた(76-72)。
正智深谷は、不屈の闘志を見せる浜松学院興誠のエース・西垣選手にスピンムーブからファウルをもらいながら、ディフェンスを空中でよけダブルクラッチをねじ込まれてしまうなど驚異的な粘りを見せつけられる。
残り時間34秒。他のコートの試合はすべて終わり、会場中の視線が注がれる異様な緊張感の中、ボールは宙を舞った。
リバウンド争い。一番高く飛び、ボールをもぎ取ったのは正智深谷の加藤駿選手だった。
今日の彼の献身を象徴するディフェンシブリバウンド。ファウルゲームを凌ぎ切った正智深谷が激戦を制し、2回戦進出を決めた。
最終スコア「一回戦を勝つ」相手と「勝ち上がる」自分たち
「指導者である私も含めて、正直少し油断していました」正智深谷・成田靖監督はそう振り返る。苦戦の原因は相手チームとの「覚悟の差」にあった。
「完全に向こうは『この一回戦に勝つ』つもりで来ていた。対してうちは、『ここはあくまで(優勝まで)勝ち上がるための一つ目の段階』という捉え方をしてしまっていた」目の前の敵に全力を注ぐ相手に対し、先を見てしまっていた正智深谷。その精神的な隙が、コート上での対応に繋がった。
「完全に気持ち負けしていました。アップセット(番狂わせ)が起こりそうになりましたね」流れを変えた要因として、成田監督は「ディフェンスの修正」と、早船選手のゲームメイクを挙げた。
「相手はスモールラインナップで、平面(スピード)で勝負に来ていた。早船がそこを冷静に見極め、相手の一番弱いところ(ミスマッチ)でボールを握り、ゲームを支配してくれたのが大きかった」また、アウトサイド重視ではなく、インサイドでの得点が目立った点については、相手の守備戦術を逆手に取った結果だと明かす。
「相手がパスコースを激しく塞ぐ『ディナイディフェンス』を徹底してきた。パスは回させないという守備でしたが、逆に裏のスペースが空く。そこを突いてレイアップシュートに持ち込む場面が増えました。一番確率の高い(ゴール下の)シュートを打たせ続けてくれたのは、こちらの想定とは違いましたが、結果的にそこが攻め手になりました」得点以外で魅せたエース加藤のキャプテンシー
この日、徹底的なマークに遭い、オフェンスで苦しんだエース・加藤駿選手については、その精神的な成長を成田監督は高く評価した。
「加藤も気負っていましたし、マークが厳しいのは予想通り。でも、今の彼は『点が取れないときに何ができるか』を分かっている」試合終盤、加藤は相手のエースである12番(西垣選手)に対し、自ら「俺がマークする」と志願。リバウンド争いでも執念を見せた。
次戦に向けて「精度の勝負になる」
正智深谷の成田靖監督次戦以降は留学生のレベルも上がり、戦いはさらに激化する。
「次から留学生のレベルが少し上がるのでそこを2回戦3回戦を意識して練習をやってきた。浜松学院は初戦突破を目標に掲げ、ウチ(正智深谷)を倒すために変則的なことをやってきたが、次は勝ち上がるためのバスケットをしてくるチーム。どちらのバスケットの精度が高いか、真っ向勝負になると思います」正智深谷の2回戦の相手は、帝京第五高校(愛媛)を95-70で下した山梨学院高校(山梨)だ。 留学生3名を擁し、2年生が主体となるこの若いチームは、圧倒的な高さを武器にしながらアウトサイドシュートも選択肢にあるチームだ。
正智深谷は、持ち味である「堅守」と初戦で掴んだ「全員で戦う手応え」で、この規格外の高さに挑むことになる。
「高さ」を凌駕する「精度」を見せつけられるか。エース加藤選手と正智深谷の真価が問われる一戦となる。
■男子決勝
12月29日 (月) 午後1時 ※テレビ朝日系列にて生中継
■女子決勝
12月28日 (日) 午後0時 ※BS朝日にて生中継
■熱冬!高校バスケ デイリーハイライト ※一部地域除く
12/23(火)〜29(月)放送 【テレ朝バスケHP】
https://www.tv-asahi.co.jp/basketball/wintercup/2025/
【テレ朝スポーツYouTube】
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