「SoftBank ウインターカップ2025」の男子3回戦が行われ、埼玉の雄・正智深谷高校(埼玉県)とウインターカップ5度の優勝を誇る福岡第一高校(福岡県)が12月26日、東京体育館にて対戦した。正智深谷は持ち味である堅守速攻と高いシュートタッチでリードを奪う場面もあったが、福岡第一のディフェンスに苦しみ正智深谷は3回戦で敗退した。
正智深谷エース躍動も 福岡第一の鉄壁崩せず
正智深谷のエース・加藤駿選手(3年生)のリバウンドから、藤本勝悟選手(2年生)が中距離からのジャンプシュートを鎮め、戦いの火ぶたが切られた。
正智深谷の藤本勝悟選手(2年生) この記事の写真は10枚 藤本勝悟選手(2年生)「自分の役割はリバウンドや走ること、そして3ポイントと決めていた。福岡第一さんには負けないという思いで入った」
藤本選手は立て続けに3ポイントを沈め、流れに乗る正智深谷。 この流れを逃さまいと、正智深谷のエース加藤駿が3ポイントと得意のミドルシュートを沈め、福岡第一からリードを奪う(10‐7)。
ウインターカップ5度の優勝を誇る福岡第一が反撃に出る。得意のディフェンスからの速攻で、得点を量産。福岡第一のルーキー、バー・ブラヒマ・ハリル選手(1年生)の豪快なダンクをリングにたたきつけた(14‐19)。
食らいつく正智深谷は加藤選手のジャンプシュートや、相手ディフェンスに苦しみながらも早船哉斗選手(3年生)が後ろに飛びながらシュートを決めるも、3点ビハインドで第2Qを迎える(18‐21)。
正智深谷の加藤駿選手(3年生)正智深谷の反撃ムード断つ 福岡第一の“魔法のパス”
第2Qに入っても、正智深谷は福岡第一の「速攻」を受けてリードを広げられ、流れをつかむことができない。 8点差までリードを広げられた場面で、正智深谷を代表するようなプレーが飛び出す。
激しいチェックのディフェンスからスコアラー・早船選手の速攻が決まりチームが息を吹き返す(23‐29)。
正智深谷の早船哉斗選手(3年生)正智深谷の反撃ムードを壊したのが福岡第一のWキャプテン・宮本耀(みやもと・よう)選手(3年生)だった。 鋭いペイントエリアへのドリブルから、藤田悠暉選手(3年生)への美しいノールックパスで鮮やかにゴールを演出し、さらにリードを奪う(23‐33)
福岡第一の宮本耀選手(3年生)早く追いつきたかった正智深谷だったが福岡第一の鉄壁をくずしきれず10点ビハインドのまま後半を迎える(29‐39)。
広告 「哲平!自分で行け!」指揮官の檄で蘇った堅守速攻「哲平!自分で行け!」指揮官の檄で蘇った堅守速攻
正智深谷の山口哲平選手(3年生)第3Q、反撃の狼煙(のろし)を上げたのは藤本選手だった。後半開始早々、気迫の3ポイントを沈め、チームを鼓舞する(32-41)。
正智深谷は、福岡第一の司令塔・宮本耀選手と藤田選手のリズムのいいオフェンスに苦しめられ、点差を広げられる(32-48)。 この悪い流れを断ち切るべく、正智深谷の成田靖監督がすかさずタイムアウトを要求した。
そして、タイムアウト明けに成田監督の檄(げき)がコートに飛ぶ。
正智深谷・成田靖監督「哲平、自分で行け!」
その言葉に、山口選手の闘志に火がついた。
山口哲平選手(3年生)「成田監督から『自分の足を信じろ』と言われ、ずっときつい練習を走ってきたので、自信を持って切り込もうと思った」。
正智深谷のスラッシャー・山口哲平選手(3年生)がミドルジャンパーをねじ込むと、ここから「堅守速攻」が爆発。早船選手のスティールから山口選手が冷静に加点するなど怒涛の追い上げを見せ、50-58と8点差で最終Qへ望みをつないだ。
怪我に泣いたエース
第4Q、先に得点を奪いたい正智深谷は、加藤選手が3ポイントを狙うも、得点を奪えないシーンが続く。すると、福岡第一の宮本聡選手(3年生)、トンプソン・ヨセフ・ハサン選手(3年生)らが要所で3ポイントを突き刺し、正智深谷は突き放されてしまう(54-72)。
残り3分48秒。成田監督の「最後は駿(しゅん)で」 という思いを知るエース・加藤選手はケガと戦う3年間だった。バスケがもうできないと思い眠れない夜もあったという。
正智深谷の加藤駿選手(3年生)「自分が出られない時に支えてくれたチームメイトに恩返しがしたい」と語っていた。
加藤駿選手(3年生)「苦しい時に決めるのがエース。絶対決めてやろうと思った」
その思いを乗せた3ポイントシュートが、美しい放物線を描いてリングを射抜く(57-72)。 そして、エースの一撃に呼応するように、チーム全員が最後の力を振り絞る。
強豪・福岡第一のオフェンスを止め、24秒バイオレーションを奪ったディフェンスは、まさに正智深谷の集大成だった。
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第4Q、残り時間1分36秒。正智深谷の成田監督は3年生だけをコートに送り出した
苦楽を共にした仲間たちと最後の攻撃。ディフェンスからもぎ取ったボールを、最後は本橋芽空(もとはし・がく)選手(3年生)が速攻を決めた(59-78)。
正智深谷の3年生試合終了のブザーが無情にも会場に響き渡り、最終スコアは59-82。勝利には届かなかったが、最後まで走り抜き、戦い抜いた正智深谷。その勇敢な姿に、会場からは惜しみない拍手が送られた。
受け継がれる正智深谷の想い
正智深谷の成田靖監督 正智深谷・成田靖監督「バスケットの技術で言うと、ターンオーバーが多かったですし、フリースローも入らなかったので彼らの素晴らしいところが全部出たかと言うとそうではない。最終的に20点差が開きましたけど一年間やってきたなかで彼らがここに立てて、福岡第一さんに挑めたのすごく良かった」
技術的な課題と敗北を認めつつも、指揮官の表情に陰りはなかった。むしろ、その目にはこの一年間を駆け抜けた選手たちへの誇りが宿っていた。
正智深谷・成田靖監督「3年間の成長がものすごく分かりやすく見えたので、なかなかこういうチームには出会えない、すごく良いチームだった思います。」
試合後、成田靖監督は確かな口調で語った。厳しく接した監督からの、最大級の賛辞。その評価を証明するかのように、激闘を終えた選手たちの言葉には、3年間を走り抜いた者だけが知る深い絆が滲んでいた。
正智深谷の藤本選手、山口選手、加藤選手(写真左から)怪我に苦しみ、眠れぬ夜も過ごしたキャプテン・加藤駿選手(3年生)。最後に言葉を詰まらせながらも彼が語ったのは、コートに立てなかった仲間への感謝だった。
加藤駿選手(3年生)「日々の練習で、ベンチに入れなかった3年生全員が厚く支えてくれたから、自分たちはここに立てた。自分が苦しい時も支えてくれたメンバーなので、最後に東京体育館で5人で試合ができて楽しかった」
監督の「自分で行け」という言葉で覚醒し、チームを牽引した山口哲平選手(3年生)は、充実感と名残惜しさが入り混じる複雑な心境を吐露した。
山口哲平選手(3年生)「うれしい気持ちもあったけど、まだ一緒にバスケをしたいという悲しい気持ちもあった。きつい練習を全員で乗り越えてきたのが一番の思い出だった」
厳しい練習を乗り越えて生まれた自信と絆は、勝敗を超えた財産として彼らの胸に残った。
偉大な先輩たちの背中を追いかけ、この試合でもスタートダッシュを決めた藤本勝悟選手(2年生)。
敗戦の悔しさを滲ませながらも、その視線はすでに未来を捉えていた。
「3年生がこれまで引っ張ってくれたので、これからは自分が頑張りたい。今度は自分たちがメインコートの表彰台を目指し、この舞台に戻ってくることで恩返ししたい」
勝利には届かなかった。だが、強豪・福岡第一を相手に貫いた「走るバスケ」と、最後まで諦めなかった「正智の意地」は、後輩たちへと受け継がれていくはずだ。
冬の東京体育館を駆け抜けた彼らの足音は、これからも正智深谷の新たな歴史として響き続けるはずだ。
【放送予定】
■男子決勝
12月29日 (月) 午後1時 ※テレビ朝日系列にて生中継
■女子決勝
12月28日 (日) 午後0時 ※BS朝日にて生中継
■熱冬!高校バスケ デイリーハイライト ※一部地域除く
12/23(火)〜29(月)放送 【テレ朝バスケHP】
https://www.tv-asahi.co.jp/basketball/wintercup/2025/
【テレ朝スポーツYouTube】
https://www.youtube.com/@tvasahi_sports ■高校バスケ 日本で一番熱い冬〜SoftBank ウインターカップ直前SP〜
https://tver.jp/episodes/epz6foe8vw
※TVerで2026年1月14日まで視聴可能 広告
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