秋場所注目の安青錦【NHKプラスで配信中】

安青錦はロシアによるウクライナへの軍事侵攻から逃れて、相撲を続けるため、3年前の4月に来日し、友人のいる関西大で稽古を積み、その後、安治川部屋に入門しました。

おととしの秋場所で初土俵を踏み、この年の九州場所で序ノ口、続く初場所では序二段で優勝するなど順調に番付をあげました。
ことしの初場所で12勝3敗の好成績を残し、続く春場所で所要9場所での新入幕を果たしました。

年6場所制が定着した昭和33年以降では、幕下付け出しを除くと歴代1位に並ぶ、スピード昇進でした。
そして新入幕から2場所連続で11勝4敗の好成績で敢闘賞を獲得し、幕内でも強さを見せました。

初めて上位総当たりとなる前頭筆頭で迎えた先場所は3日目に横綱・豊昇龍に勝って初土俵から12場所と最速で初金星を挙げるなど、千秋楽まで優勝争いに加わり、11勝を挙げて三役昇進をつかみました。
初土俵から所要12場所での三役昇進は、昭和33年以降、幕下付け出しを除いて元横綱・朝青龍などを抜き最速となりました。

安青錦
「関取になったら次は幕内を目指す、幕内に上がったら三役っていう感じでやってきたので、速く上がることができてうれしい。記録を作ったことはうれしいが、それよりも皆さんの記憶に残りたいという気持ちのほうが強い」
低い姿勢を崩さない攻め
数々のスピード記録をうち立ててきた安青錦の最大の持ち味は低い姿勢を保ったまま攻める相撲です。

こうした相撲を体現できている要因のひとつに、ウクライナで取り組んでいたレスリングの経験があるといいます。
安青錦
「レスリングは6分間の試合で、ずっと低い体勢で試合をするので、背筋や腹筋とかもよく鍛えていたし、それが結構大きいと思う。自分がされたら嫌なことを相手にするって感じでやっている」

レスリングのベースも持ちながら低い姿勢の相撲に欠かせないのが、師匠で元関脇・安美錦の安治川親方の教えです。
安治川親方は、しこやすり足といった相撲の基本動作がもっとも大切だと指導してきました。
安青錦は師匠のことばを信じて、関取になってからも若い衆に交じってしこやすり足を大事に丁寧に稽古を重ねてきました。

安治川親方
「私もけがが多く、相撲が取れない時もあったが、しこやすり足に関しては、自分が気持ちを持ってやるかやらないかだけなので、調子のいい悪いも関係ない。毎日できる稽古ということで、すごく大事にはしているし、しことすり足をやっていればある程度相撲は取れるというのは私も現役中に経験があったので、それをやらせている」
安青錦
「親方の言ったことを信じてやるだけ。基礎って、さぼろうと思えばさぼれるので、そこは逃げないようにしっかりやる」
過去の取組映像からヒントを

低い姿勢の相撲に加え、相手の内ももを手で払って体をひねって倒す「内無双」や相手のひざか太ももを片手で外側から抱え込んで引き、もう一方の手で相手を押し込み、体を預けて倒す「渡し込み」など多彩な技も安青錦の強みです。

こうした技は食事の際や自由時間に過去の取組を見てヒントを得ています。
第66代横綱・若乃花や現役時代の師匠など、自身と体格の近い力士の映像をよく参考にしていると言います。

安青錦
「こういう時にこういうところでまわしを取ったらいいとか、いいなと思ったことは盗んで、自分のものにすると見ながら考えている。もっとうまくなりたい、そういう思いでやっている」
おかみの支え
入門から2年。

生活面でサポートするのが部屋のおかみの杉野森絵莉さんです。
慣れない場所や病院の付き添いなど入門以来、安青錦を支えてきました。
安青錦もなんでも相談できると信頼を寄せています。
安青錦
「自分は外国出身力士なので、部屋に入れてくれたこと、いろいろ教えてもらったりとかして、すごく感謝している。恩返しできるのは土俵の上なので親方とおかみさんにいっぱい喜んでもらえるように頑張りたい」
おかみ 杉野森絵莉さん
「この2年ですごく目覚ましい成長をしてくれていると思う。頑張っているのでできるかぎりのサポートをしたい。場所が終わるたびに新しい景色を見させてもらっているのでありがたい」
さらなる高みへ
秋場所に向けても順調に稽古を重ねた安青錦。
最速で三役に駆け上がり、立ち止まることなく、目指すのはさらなる高みです。

安青錦
「力士だったら一番上を目指さないと、やっている意味がないと思うので、一番を目指してやっていきたい」
(2025年9月11日「ニュースウオッチ9」で放送)
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