
十勝産の小麦にこだわったパンを製造販売する満寿屋商店(北海道帯広市)は、同市内の販売店「麦音」の敷地を拡大し、来店者が馬と触れ合える牧場(1730平方メートル)を来年春にオープンすると発表した。パン販売店に牧場が併設されるのは珍しく、関係者は「開拓を支えた馬を通じて十勝らしい農業と食、馬文化の関わりを感じてほしい」と話している。【鈴木斉】
満寿屋商店は、帯広と近郊の計7店舗で「ますやパン」を販売。2009年にオープンした麦音は敷地面積1万2000平方メートルで、広大な庭や小麦畑などを眺めながら、購入したパンを屋内外のカフェスペースで味わえ、地元住民や観光客らに人気だ。
新設する「麦音馬牧場(仮称)」は、今後数年かけて敷地面積を3万平方メートルに拡大し、十勝産小麦の価値を伝え、食育活動にも力を入れる「麦音拡張計画」の一環。厩舎(きゅうしゃ)や事務所を建て、ばん馬とドサンコを最大5頭飼育する。
牧場の事業費は約6000万円。来店客には引き馬や馬車、冬季の馬そりなどの体験を提供するほか、馬の堆肥(たいひ)を活用した野菜栽培、医療・教育機関と連携したホースセラピーも検討する。
麦音はJR帯広駅から南に約4キロの市街地にあり、日常生活の場に馬のふん尿の臭いなどが漏れる可能性もあるが、既に住民らに説明し理解を得ているという。

牧場の運営は、帯広の夜の繁華街を馬車で巡り、観光客に人気の「馬車BAR」事業を実施している十勝シティデザイン(帯広)が全面協力する。同事業で馬車を引くばんえい競馬の元競走馬ムサシコマ(牡13歳)も、現在の幕別町の厩舎から麦音馬牧場に移る。
拡張計画では、牧場整備後、パン窯を設置したイベント広場や小麦畑の拡張などにも取り組む予定だ。
4日に麦音で記者発表があり、満寿屋商店の杉山雅則社長は「十勝の農業や馬文化を感じ、世界中から人が集う場所にしたい」と開設の意義を強調。十勝シティデザインの坂口琴美社長は「多くの人に馬を日常に感じてほしい」と話した。
同席した十勝シティデザイン創業者の柏尾哲哉氏(帯広食べ歩きまち社長)も「農業と食に馬文化が重なることで、帯広・十勝はオンリーワンの場所になる」と期待した。
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