出向先の情報無断持ち出しを陳謝する日本生命保険の幹部(12日、東京都千代田区)

銀行顧客に保険を売るのを支援するため、三菱UFJ銀行などに出向していた複数の日本生命保険の社員が営業情報を不正に持ち出していた不祥事に関し、同社が報告書を公表した。

事態を憂慮した金融庁の命令に基づく。両社はそれぞれの業界で最大手だ。「個人情報に関する不正取得はなかった」(日生)と説明するが、経団連の会長会社の所作として見逃せない。銀行経由の保険販売(銀行窓販)の再点検と適正化が必須だ。

日生から三菱UFJ銀など7代理店に派遣されていた13人の出向者が、スマホで内部情報を撮影するなどして、LINEや郵送を通じ日生本体に還流していた。

銀行は通常複数の生保の商品を取り扱う。日生が不適切に取得した情報には、生保他社の新商品の概要や、保険の売れ行きに応じた銀行員の評価体系などが含まれた。入手したそうした情報が、まるで当たり前のように日生の金融機関担当部で共有されていた。

本来、銀行が保険会社から出向者を受け入れてきたのは、保険販売は病歴のチェックなど難しい側面があるからだ。預金とは性質が異なり、不慣れな銀行員には詳しい助言が必要だ。そのチェック役が不正を働いていた。

メガバンクは今後、生保からの営業部門への出向者受け入れを原則やめる。だが、類似の不適切な事例が広がっている恐れもあり、双方徹底した調査が欠かせない。

保険の銀行窓販は2000年代に本格解禁した。ワンストップで保険に入れる利便性があるとしても、いまだに銀行側が「保険を売るのは難しい」と言うのであれば、販売手数料狙いの取り扱いを見直すべきだ。結果として顧客本位の業務運営にもつながるはずだ。

従来主力の営業職員の高齢化などで、生保にとって銀行窓販の重みは増している。日生が社内の法令順守体制を強めるのは当然だ。

損害保険会社を含め、保険の販売にからむ不祥事発覚が相次ぐ。失墜した信頼の回復が急務だ。

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