
日本製鉄は25日、傘下の米鉄鋼大手のUSスチールが既存の生産設備の改修などに約3億ドル(約440億円)を投資すると発表した。日鉄はUSスチールを通じ2028年までに、総額で約110億ドルを買収金額とは別に追加投資することを決めている。USスチールの再建に向けて、トランプ米政権に約束した巨額の設備投資が実行段階に移る。
インディアナ州のゲーリー製鉄所にある生産設備の改修に約2億ドルを投じる。改修により製造コストを改善するほか、自動車用鋼板などの高級製品の拡充につなげる。同製鉄所は自動車向け鋼板などが主力で、粗鋼生産能力は年間750万トンとUSスチールで最大となる。
ペンシルベニア州にあるモンバレー製鉄所でも約1億ドルを投資する。生産過程で副産物として生成される鉄鋼スラグのリサイクル設備を新設する。26年にも建設を始める。
日鉄はUSスチール買収後の中期経営計画を年内に公表する予定で、足元では110億ドル投資の全体像について議論を進めている。今回の発表について日鉄は「USスチールへの投資の一部に過ぎない。将来に向けた設備の新鋭化を目的とした複数の取り組みが進行中だ」としている。
USスチールを巡っては、米政府がイリノイ州のグラニットシティー製鉄所での工場停止計画を阻止していたことも明らかになっている。米政府が保有するUSスチールの「黄金株」に基づき経営に介入しており、買収後もなお経営の難しさが浮き彫りとなりつつある。
日鉄は発表から1年半をかけ6月にUSスチールの買収を完了した。日鉄による完全子会社化に難色を示していたトランプ米大統領を説得するため、USスチールを通じた110億ドル投資を決めた。
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