
入れ歯や詰め物を加工・修理する歯科技工士が、直面する厳しい現状に悲鳴を上げている。医師や歯科医師約850人が加盟する岩手県保険医協会の小山田栄二会長は県庁で記者会見し、全国アンケートの結果を基に後継者不足や長時間労働などの課題を挙げ、「このような状況が続くと、技工士の減少と技術の低下で、治療が困難になる可能性がある」と訴えた。【山田英之】
県保険医協会によると、全国の歯科技工士の就業者数は2004年は約3万5700人いたが、22年には約3万2900人になり、減少傾向にある。県内の養成機関だった岩手医科大医療専門学校の歯科技工科は19年度から募集を停止した。全国でも定員割れにより養成学校の募集停止が相次いでいる。
全国保険医団体連合会は24年9~10月に全国でアンケートを実施。岩手県を含む36都道府県の歯科技工所(歯科技工士が作業する施設)から2002件の回答があった。
調査結果によると、技工所を開設した人の年齢は50代が26・0%、60代が38・7%、70代以上が15・4%。50歳以上が8割を占め、深刻な高齢化が浮き彫りになった。
1週間の労働時間は、70時間超が約4割に達した。1週間の休日は「1日」が45・4%。「ほとんど取れない」という回答も3割を超えた。
1年間の可処分所得(手取り収入)は、300万円以下が約4割だった。長時間労働の割に低賃金になっている。後継者がいない技工所は8割を超えた。
技工士不足の解消のために改善が必要だと思うこと(複数回答)を尋ねたところ、「技工料金の全体的な値上げ」が87・0%に上った。
アンケートの自由記述欄には「給料が安い上にきつい仕事」「技工士の待遇が良くないため、他業種に転職している」などの意見があった。「技工士不足は患者の健康に与える影響が大きい」と懸念する声もあった。
22日に会見した小山田会長は「入れ歯や詰め物の供給が困難になる前に、問題を改善する必要がある」と主張。診療報酬引き上げや技工士養成学校に通う学生への奨学金制度充実を国や岩手県に要請する考えを示した。
同席した岩手県歯科技工士会の河内京治会長は「技工士は患者に喜ばれ、やりがいのある仕事。現状は安い料金でたくさん仕事をしないと成り立たない。料金の問題を解決できれば、技工士が減ることはない」と理解を求めた。
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