「小国杉のキッチンミトン」を考案した軍手工房「イナバ」の3代目、稲葉雄大さん=福岡県久留米市で2025年8月25日午後1時55分、井上和也撮影

 鍋やオーブンで調理する時に、熱いものから手を守るミトンや鍋つかみ。福岡県久留米市の軍手工房「イナバ」は、片手でも使いやすい、5本指に分かれたグローブタイプを開発した。熊本県小国町産の杉を原料にした「小国杉のキッチンミトン」だ。

 3代目の稲葉雄大さん(39)が、2023年に考えた。母がパスタの湯切りをする際、指が分かれていないミトンでは鍋を握りにくいと話したのがきっかけだった。熱を通さず安全性を保ち、物をつかみやすいミトンを作れないか――。

 最大の特徴は、手袋を二重構造にしたこと。生地はオーガニックの綿糸と小国町の杉の間伐材から生まれた天然繊維の木糸(もくいと)を合わせて編んでいる。手が直接触れる内側は木糸約15%、綿糸が約85%で柔らかめに、鍋をつかむ外側は木糸が約25%で硬めの仕上がりに。これにより、熱を通さず、手になじむ使い心地を生み出した。内側の手袋は引き出して洗濯でき、乾きやすくするなど衛生面にも配慮。約半年間の開発を経て商品化した。

 サイズはMサイズ(全長24センチ)とLサイズ(全長27センチ)の2種類で、各1組6600円。ミトンを収納するパッケージには、小国町の森とシカのイラストを施している。

5本指の「小国杉のキッチンミトン」(右)。ミトンを収納するパッケージには熊本県小国町の森とシカをデザイン=福岡県久留米市で2025年8月25日午後2時27分、井上和也撮影

 小国杉のキッチンミトンは24年度の福岡県デザインアワードの金賞に選ばれた。小売店には置いておらず、現在はネット販売やイベント用として生産している。プレゼント用での注文もあるという。

 「使いやすくて使いたくなるような商品」を心掛けている稲葉さん。今後は素材を見直して価格を抑えながら「キャンプ用やアウトドア用などに向けた商品も作っていきたい」。ミトンのノウハウを生かし、ほかのキッチングッズや生活雑貨も開拓したいと考えている。【井上和也】

イナバ

 1960年創業の軍手メーカー。自社工場では、編み目が一般的なものより細かい13ゲージ(ゲージは編み目の単位)の綿製の軍手を、子ども用から大人用まで製造。インターネットショップ「軍手工房」で購入できる。イナバ(0942・78・5378)。

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