NTT東日本とNTT西日本はメタル回線の段階的な廃止を決めていた

NTT東日本とNTT西日本は29日、固定電話のサービスに使われるメタル(銅)回線について2026年度から段階的に廃止すると発表した。26年4月1日からメタル回線を使う固定電話の回線使用料(基本料)を値上げする。住宅用は220円上がる。メタル回線は国内で100年以上に渡って社会を支えてきたレガシー(遺産)の通信インフラだ。光通信など次世代サービスへの移行が加速する。

設備の老朽化が著しく進んだ地域などで先行的に、26年度からメタル回線の終了措置を始める予定だ。28年度ごろから地域単位のサービス終了計画を順次公表して、利用者に移行を促す。メタル回線の保守が困難になる35年度ごろまでの移行完了を目指す。

メタル回線を当面維持するために基本料を値上げする。住宅用の基本料は最も一般的なプランである「3級取扱所」、付帯サービスなしの場合でダイヤル回線、プッシュ回線ともに220円上がり2090円となる。

企業向けなどの事務用は月330円上がる。固定の加入電話の値上げは1995年以来約30年ぶりだ。05年にそれまでより値下げして現行の基本料となった。物価上昇や人手不足への対応、防災対策拡充などを理由としている。

記者会見するNTT東日本の城所征可取締役㊧とNTT西日本の黒田勝己取締役(29日、東京都千代田区)

メタル回線廃止に伴う代替サービスを用意する。まず、光回線を通話専用で使う「光回線電話」を10月1日から全国で始める。従来は東京都などごく一部の地域で提供していた。山村・離島などに限って携帯通信網を使って提供している「ワイヤレス固定電話」も制度改定を経て26年4月の全国開始を目指す。高速通信サービスを使いたい利用者には光ブロードバンドとセットにした「ひかり電話」も薦める。

これらの代替サービスについては現行と同額で据え置く。

メタル回線で音声を伝える固定電話による通信は、日本では1890年(明治23年)に明治政府が始めた。鉄道などと並ぶ近代化の象徴の一つだ。戦後は国民生活に不可欠なインフラとしてさらに発達し、民営化したNTTには全国一律での提供を義務付けた。NTTが津々浦々に敷設したメタル回線はISDN(総合デジタル通信網)やADSL(非対称デジタル加入者線)にも使われ、インターネットの普及も支えた。

だが、携帯電話や光回線によるサービスが主流になり今や需要は急減している。固定電話の契約数は1997年11月の6322万件をピークに、25年6月には1130万件にまで減った。

一方で設備の老朽化が進み、維持負担は増している。NTT東西によると赤字額は年間数百億円。維持費用の一部は国民が通信料金と合わせて支払っているお金を原資とした国からの交付金で賄っており、費用増が課題となっていた。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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