
大阪市は30日、国家戦略特区法に基づく「特区民泊」の新規申請の受け付けを一時停止する方針を示した。一定の周知期間を設けたうえで止める。既存施設についても、運営が不適切な場合に認定を取り消しやすくするよう手順を明確にする。騒音やゴミなど近隣住民からの苦情への対応強化も図る。
大阪市が同日開いた特区民泊に関する部局横断の検討会で了承した。11月にも開く政府の国家戦略特別区域会議で提案する。すでに申請を検討している事業者がいることも踏まえ、一定の周知期間を設ける。再開の基準は今後詰める。
横山英幸市長は会合後、記者団に「監視・指導体制の強化や必要な制度改正がまだ整っていない。まずは新規受け付けを停止し、そのうえで必要な対策を早急に取っていきたい」と述べた。
特区民泊は指定地域で宿泊施設の開業規制を緩和する制度だ。ホテルや旅館に比べて参入のハードルが低く、通年営業が可能なため他の制度に基づく民泊より利益を上げやすい。
市内の認定施設数は7月末時点で6696施設と全国の94%を占める。施設の急増とともにトラブルが増えていた。市で24年度に受け付けた認定施設に関する苦情は399件と、最も少なかった21年度の4倍以上だった。

既存施設についても適正な運営を促すため制度の見直しを進める。
運営が不適切な施設に対して認可の取り消しの手順を明確にする。25年11月中にも処分要領を策定する。苦情が発生した場合には違反事業者への指導を徹底する。従わない場合には改善命令や認定取り消しなどの処分を実施する。現状は制度上、認可を取り消せるものの処分基準に曖昧さがあった。
保健所に「迷惑民泊根絶チーム(仮)」を新たに設置し、苦情を未然に防止できるよう指導も強化する。11月にも立ち上げる。
自治体単独で対応できない課題については国に法令改正を要望することも申し合わせた。
自治体の判断で、管理事務所を置くことを義務付けるなどの規制ができるよう求める。海外に居住する事業者については、国内代行業者への委託を義務付け、代行業者に対して指導できる規定を追加することも要望する。現行法では代行業者への行政の指導権限がないという課題がある。
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