キットは自宅での血液検査で簡単に自然妊娠のしやすさが検査できるのが特徴だ

検査キット開発のスタートアップTL Genomics(神奈川県藤沢市)は、女性が自然妊娠する可能性の高さを検査できる簡易キットを開発した。同社によると国立循環器病研究センターや大阪公立大学との共同研究による技術や知見を用いた。自然妊娠のしやすさを自身で調べられるようにして、不妊治療の早期開始などに役立ててもらう。

9月、検査キット「MYエイジF」をTL Genomicsの公式サイトで発売した。公式サイトでの販売価格は2万8600円。自宅での採血による検査に加え、提携する不妊治療専門のクリニックなどでも検査できるという。

キットに用いたのが、独自の染色体解析技術「SinChro(シンクロ)法」。血液中の老化細胞の割合を測ることができるのが特徴だ。細胞の老化度合いが進めば自然妊娠の成功率が低下することがわかっているという。同社は自然妊娠の成功が見込まれる度合いを「妊娠力」と称し、簡易キットで調べられるようにした。

自宅での検査の場合、サイトでの購入後、検査キットを自宅に送付。価格には送料や検査費用、検査結果の作成費用が含まれており、自身で採血し同社に返送すると1週間ほどで検査結果をメール配信する。

血液の状態をもとに自然妊娠の可能性を数値で示す。「実年齢プラス7歳まで」「実年齢マイナス7歳まで」の集団と比較することで老化度合いを4段階で評価する。

自然妊娠の可能性は簡易キットで調べられる細胞の老化度合い以外の要素も影響するが、検査結果から早期に不妊治療に踏み切るなどの選択肢を選びやすくなるという。これまでも医療機関などと連携して検査キットの販売を進めてきたが、より手軽に検査するために個人向けの販売を始めた。

「産みたい人が産める社会の実現を」と力を込める久保社長(9月、東京都品川区)

妊娠のしやすさを知るには、血液検査によって卵巣中の卵子数を測るAMH検査が主流だが久保知大社長によると、卵子が少なくても妊娠する人がいるなど「妊娠のしやすさとは無関係」と話す。

2021年の国立社会保障・人口問題研究所の調査によると不妊の検査・治療を受けたことのある夫婦は22.7%で4.4組に1組の割合になっている。企業や自治体が不妊検査の助成や補助をする取り組みも広がっており、需要の増加が見込まれる。

TL Genomicsは15年1月に設立し、資本金は1億円。神奈川県のベンチャー支援ネットワーク「SHINみなとみらい」にも参加している。

久保氏は米コロンビア大学で基礎研究に従事した後、タカラバイオで事業開発やマーケティングに携わってきた。自身も不妊治療で苦労した経験から「クリニックに足を運ぶのに抵抗がある人も自宅で気軽に自身の妊娠力を知り、産みたい人が産める社会の実現に役立てたい」と話す。

(松原礼奈)

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