みずほ証券の浜本吉郎社長は個人向け営業のてこ入れを進める

みずほ証券が出遅れていた個人向け営業部門をてこ入れする。業界首位の座も見えてきた投資銀行部門との落差があるからだ。投資銀行として世界トップ10入りを目指すみずほ証券にとって、ピースを埋めることができるのか。浜本吉郎社長はインタビューで「野村証券が普通にやっていることができていない」と露骨に発破を掛けた。

まずは個人向け営業に関し、富裕層の担当者の数を数年内に一般個人担当と同等にする方針だ。単純計算で現在の3倍超に増員する。みずほ証券の個人向け営業部門は現在約2000人の営業員を抱えるが、そのうち総資産5億円以上の富裕層とそのオーナー企業などを担当する営業員は一般個人向けの営業員の5分の1ほどにとどまる。

みずほ証券の本部で勤める人員も段階的に減らす。半期あたりで50人単位で営業現場に移すことも想定する。「グループの銀行や信託が持つ情報を顧客の同意を得ながら共有すれば、他社よりも高い確度で追いつける」と強調した。

同社は4月に、野村証券で常務執行役員などを務めた湯原裕二氏を個人向け営業部門の部門長に起用した。浜本社長は湯原氏を「コールセンターの改革や銀行仲介で新しいビジネスモデルを築き、今の野村証券の飛躍を支えた」と評す。湯原氏の知見を活用して個人向けのてこ入れを進める。

富裕層営業を伸ばせば長期の資産形成にひもづく安定的な収益基盤の構築につながる。浜本氏はファンドラップといった売買手数料に基づかない安定収益の比率を数年内に50%に引き上げる目標を掲げた。今は40%程度にとどまり、50%を超える大和証券などに離されている。

総資産5億円以下の顧客はコールセンターを中心に非対面での営業に切り替える。浜本氏は資本提携する楽天証券の活用にも触れた上で「みずほは対面だからこそ価値を発揮できるところに力を注いでいく」と語った。

同社の収益をけん引する投資銀行部門にも課題はある。浜本社長は「5年後をめどに債券引き受け、株式引き受け、M&A(合併・買収)助言の3分野で国内で盤石の1位を目指す」と語った。債券引き受けに続き、株式引き受けとM&A助言の底上げを図る。

興銀証券や第一勧業証券など債券に強い証券会社を源流に持つみずほ証券は、これまで債券業務に強かった。英LSEGによると、同社は2025年1〜6月に日本関連の債券引き受けで首位だったものの、株式引き受けで4位、M&A助言で6位と他社に出遅れている。

株式引き受けでは世界で最大規模の機関投資家向けの日本株セールスを生かし、海外での販売力を強める。M&A助言ではみずほフィナンシャルグループが23年に買収した米投資銀行のグリーンヒルの知見や顧客網を生かし、国際的な案件への関与を増やす。

浜本社長は「世界で10位以内の投資銀行を目指す」とも宣言した。みずほ証券は収益の大半を日本と米国であげており、欧州やアジアなど他地域での収益基盤の構築が途上にある。

浜本社長は日本と米国でのCIB(商業銀行と投資銀行の業務を一体的に手がけるコーポレート・インベストメント・バンキング)モデルの成功を例に挙げ、「日本と米国で持つ強いビジネスの軸を、欧州とアジアに輸出していく」と意気込みを語った。

(三原昂大)

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