
ソニーフィナンシャルグループ(FG)が「スピンオフ」という手法で東証プライム市場に上場した。親会社の傘下から離脱し、独立した企業として生まれ変わるスピンオフは米国では多用されるが、日本ではほとんど例がない。
ソニーFGが先駆けになってスピンオフ経営が日本でも定着し、各社の経営改革の速度が上がることを期待したい。
スピンオフは親会社の株主に子会社の株式を無償で配り、親子間の資本による支配関係を解消する手法だ。日本企業によくある子会社の上場とは異なり、親会社に株式売却による現金収入は入らないが、子会社の経営の独立が明確になり、新たなスタートが切りやすいのが特徴だ。
親会社にとっても、雑多な事業が混在することで会社の性格があいまいになり、企業価値が低下するコングロマリットディスカウントの解消につながる。
ソニーFGの場合は親会社のソニーグループ(ソニーG)がエンターテインメント事業へ傾斜する中で、金融会社が一部門としてぶらさがる意味は薄れていた。グループ内の資源配分でもエンタメ事業が優先され、金融ビジネスは後回しにされる恐れがあった。
そこで経営の自由度と成長への基盤を確保するために、独立を受け入れた。ソニーGも事業の焦点を絞れるほか、巨額の負債を抱える金融部門を切り離し、バランスシートを軽くすることで、市場価値の向上が見込める。
両社にとってウィンウィンの結果になるか注目したい。
スピンオフには子会社の全株式を配布する完全スピンオフと、少数の出資は残すパーシャルスピンオフの2つがあり、ソニーGが引き続き16%程度の株式を保有するソニーFGは後者にあたる。
米国でもIBMによるインフラサービス会社「キンドリル」の分離や、旧ゼネラル・エレクトリックの航空、ヘルスケア、エネルギーの3事業への分割では「パーシャル」が採用された。
若干の資本関係を残したほうがブランドの共有などが円滑に進むという判断からだが、旧親会社と他の株主の間に利益相反が生じる恐れもあり、留意が必要だ。
事業の切り出しには他にも他社への売却や親子関係を維持しながら子会社を上場させるなどの方法がある。それぞれの利点と短所を理解し、賢く使い分けたい。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。