
①通期に対する4〜6月期の進捗率が高い「上方修正期待」銘柄
「第1四半期の好調な実績と今後の進捗を踏まえ、第2四半期の決算で通期予想の見直しを行う」。アステラス製薬(4503)が7月30日に開いた決算説明会で、北村淳最高財務責任者(CFO)が上方修正を事実上「予告」すると、アナリストからは詳細を見極めようとする質問が相次いだ。25年4〜6月期の連結純利益は684億円で、26年3月期の通期見通し(1300億円)に対する進捗率は53%に達する。
重点戦略製品と位置づける5つの薬のうち、尿路上皮がん向け治療薬「パドセブ」や胃がん治療薬「ビロイ」など4つで前年同期比の伸びが3割を超えた。研究開発費や販管費の減少も利益率改善につながった。
玩具卸大手のハピネット(7552)の4〜6月期の純利益は33億円で、26年3月期(72億円)の46%に達した。期初の通期見通しではトレーディングカードのブームが続くことに慎重姿勢で、玩具事業では営業減益を見込んでいる。蓋を開けてみれば4〜6月期の同事業は10%の営業増益で好調を維持する。
デジタル版「日経ヴェリタス」は、「投資が分かり、面白くなる」がコンセプトの専門メディアです。週末じっくり、平日は効率的に 日経ヴェリタスの読み方②関税の影響が期初よりも少ない「最悪期脱出」銘柄
「トランプ関税による業績の下がり幅が見えたことで外需企業を買いやすくなった」。アセットマネジメントOneの酒井義隆株式運用部共同部長は、今後の自社株買いも期待してトヨタ自動車(7203)を買い増した。
トランプ関税の影響は、霧中だった25年3月期決算公表時に比べ鮮明になってきた。日米両政府は7月に、米国側が当初25%を予定していた相互関税と、27.5%を課している自動車関税を15%に引き下げることで合意した。関税の全体像が明らかになり、外需企業を中心に期初時点から関税影響額を引き下げたり、初めて開示したりする企業が目立つ。
特に影響額が大きいのが輸出関連業種の代表格である自動車だ。ホンダ(7267)は6500億円から4500億円に引き下げ、初めて通期の影響額を開示したマツダ(7261)は2333億円とした。
もっとも、期初想定より緩和するとはいえ、トランプ関税が収益を圧迫することに変わりはない。関税によるコスト増をいかに価格転嫁できるかも焦点となる。
コマツ(6301)は米中間の相互関税の一時停止などを踏まえ、通期のコスト影響を35億円引き下げたが、需要減を含めると908億円の下押し材料だ。コスト増を抑えるため、今夏から北米で新たに値上げに踏み切る。
③受注額を伸ばした「中長期に期待できる」銘柄
「受注は最も注目している指標」。PGIMジャパンの鴨下健株式運用部長はいう。機械や電子部品、建設などで受注が伸びていれば「将来の業績拡大への確信が高まる」ためだ。
船舶用エンジンを手掛けるジャパンエンジンコーポレーション(6016)の4〜6月期の受注額は34%増の85億円だった。海上輸送の増加や老朽化した船舶の代替需要を背景に船舶建造量は増加基調にある。船舶用エンジンでは先行き3年程度の工事量を確保しているほか、修理や部品供給などアフターサービスも確実に取り込んでいる。

さらに船舶業界はカーボンニュートラル達成のため現在の重油燃料からアンモニアや水素など脱炭素燃料に代える必要がある。ジャパンエンではこの動きに対応した次世代燃料エンジンの開発が進む。
「受注動向が見えている今後3年だけでなく、その先の脱炭素対応が進むなかでも需要を取り込める可能性がある」とカレラアセットマネジメントの児嶋竜三国内証券チーフインベストメントオフィサーは指摘する。運用する「カレラ日本小型株式ファンド」などでジャパンエン株は組み入れ上位だ。
(大越優樹、阿部真也、松本裕子が担当した。グラフィックスは久保庭華子)
[デジタル版・日経ヴェリタス2025年8月23日号トップストーリーを要約]
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