民間などの試験研究に出資する国の事業に関連し、経済産業省所管の国立研究開発法人が、使う見込みがないまま約28億5千万円を保有していた。会計検査院の調べでわかった。検査院は「国庫に納付する必要がある」と改善を求めた。
指摘を受けたのは「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)の「基盤技術研究促進事業」などの資金。国債の発行で調達した資金を投資する「財政投融資」を活用し、エネルギーやナノテクノロジーなどの先端分野で民間の研究を促す事業だ。日本の新たな知的資産を生み出すのが目的とされた。
検査院によると、事業は2001年度に開始。各事業の見直しを進めた民主党政権の閣議決定で、11年度から新規の採択が廃止された。
初の国産ジェット旅客機開発などに出資 欠損金620億円
三菱重工業が23年に事業から撤退した国産初のジェット旅客機「スペースジェット」の開発など84件に対し、政府は13年度までに事務費を含めて計739億3千万円を出資した。出資先の収益の一部はNEDOに納付されるが、累積では支出が大きく上回っており、24年度末で620億7千万円の欠損金が生じている。
NEDOは法令により、不要と見込まれる政府の出資金を国庫に納付する必要がある。また当時の閣議決定では、政府の出資金かどうかに関わらず、余っている不要な資金は国庫に納めることを求められていた。
これを踏まえ、検査院はNEDOの資産について保有の必要性を検討した。その結果、事業に関連する資産として、研究成果で生まれた収益など約18億5千万円、有価証券10億円がNEDOに残されていた(24年度末時点)。
このうち18億5千万円は政府の出資金ではなく、経産省とNEDOは納付の対象外と判断していたという。だが、検査院は当時の閣議決定に基づき、「速やかに国庫に納付する必要がある」と判断。また、有価証券10億円は政府の出資金に該当し、使う見込みがないため、国庫に納めるべきだと認定した。
NEDOは「経産省などとも協議し、要求された処置を適切に行いたい」、経産省は「指摘を受けて、しっかり対応したい」とした。
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