
欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は7日、無関税の輸入枠を超えた鉄鋼への関税率を現行の2倍となる50%に引き上げる案を公表した。無関税の輸入枠自体も2024年からほぼ半減させる。トランプ米政権の高関税政策を受け、行き場をなくした中国製などの安価な鉄鋼が域内市場に流入することを防ぐ狙いがある。
欧州委によると、年間の無関税輸入枠は24年比47%減となる1830万トンに絞り、超過分には50%の関税を課す。50%は米国が鉄鋼に課す関税率と同じだ。また、中国が他の国を通じてEUに安価な鉄鋼を輸出しているケースを念頭に、流通ルートの追跡も強化する。
現在、EUは産業保護を目的に鉄鋼への緊急輸入制限(セーフガード)を導入しているが、26年6月末で期限を迎える。それまでに加盟国や欧州議会との協議を済ませ、強化策として導入したい考えだ。
欧州委によると、中国をはじめとする各国の過剰生産のあおりを受け、EU域内の鉄鋼の設備稼働率は24年時点で健全とされる8割を切り、67%まで落ち込んでいる。07年以降、最大10万人の雇用が失われたと主張している。トランプ関税の影響で、状況がさらに悪化することを欧州委は警戒している。
フォンデアライエン欧州委員長は「世界的な過剰生産が我々の産業にダメージを与えている。今こそ行動が必要だ」との声明を出した。
国ごとの無関税輸入枠については今後協議する。EUに鉄鋼を輸出するのは、英国や韓国といった友好国も含まれ、対立を生むリスクもある。【ブリュッセル岡大介】
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