
2025年のノーベル経済学賞の受賞が決まった米国の大学教授ら3人が13日、記者会見などでメディア取材に応じた。米国が一方的に課す「トランプ関税」が世界経済を揺るがせているが、受賞決定者からも懸念する発言が相次いだ。
「経済成長をもたらす技術革新のためには、大学と企業、政府の連携が不可欠だ。しかし、先行きには暗雲が漂っている」。米ブラウン大のピーター・ホーウィット教授(79)は13日のオンライン会見でこう述べた。
ホーウィット氏ら3人は、技術革新が持続的な経済成長をけん引する仕組みについての研究が評価され、受賞決定に至った。その技術革新を阻害しかねない要因として挙げたのが貿易保護主義。念頭にあるのがトランプ関税だ。
急激に高関税が課されると、輸出入のコストが跳ね上がり、企業は関税負担を嫌って国内ばかりで取引するようになる。それでは研究開発投資も内向き志向になってしまう。
ホーウィット氏は「市場規模の縮小は技術革新のインセンティブを低下させる。国際貿易を制限すればするほど、その傾向は強まる。これは重大な影響を与える」として、経済成長への悪影響を危惧した。

同時受賞するフランスのコレージュ・ド・フランスのフィリップ・アギヨン教授(69)も、欧米メディアの電話取材で同様の問題意識を語った。
アギヨン氏は、市場が大きいほど、企業間でアイデアの共有や技術移転、健全な競争が起きる可能性が高まると指摘。「開放性は成長の原動力となる」と強調した。米ブルームバーグ通信によると、「米国での保護主義の波は歓迎しない」と述べ、「トランプ関税」に対して明確にノーを突きつけた。
もう一人の米ノースウエスタン大のジョエル・モキイア教授(79)は経済史家の観点で、関税とは異なるテーマでトランプ米政権に言及した。

モキイア氏は人類が直面する前例のない課題として気候変動と人口動態の変化を紹介。「危機を脱却する唯一の対処法は自らを絶えず革新させることだ」としたうえで、「二つの危機から革新的な技術で人類を救おうとする人々に、資金や資源を注ぎ続けるべきだと強く訴える」と強調。気候変動対策やクリーンエネルギーの推進に後ろ向きなトランプ政権を暗に批判した。【ワシントン浅川大樹】
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