老朽化する軍艦島の建造物について、清水建設の技術者らが説明した(長崎市の許可を得て撮影)

清水建設は長崎市の端島(通称・軍艦島)に研究拠点を整備する。1974年に閉山した同島では建造物が劣化し、保存に向けた調査が進められている。上陸した調査員らの作業・休憩の場とするほか、災害時の一時避難所とする。11月に着工し、2026年3月の運用開始を予定する。端島に建造物が新設されるのは55年ぶりとなる。

15日に清水建設と長崎市が連携協定を結んだ。研究拠点は木造平屋で床面積約50平方メートル。端島の砕石を利用した基礎の上に木材の部材を組み立て、12月の完成を予定する。市の職員や清水建設の社員、研究者などが年間100日ほど利用する見込みだ。

軍艦島の砕石を研究拠点の基礎に利用する(長崎市の許可を得て撮影)

端島は電気や水道が通っておらず、プロパンガスを用いる発電機で空調と照明を動かす。今後太陽光発電パネルの設置も検討する。限られた水を再生循環するしくみのトイレもあわせて設ける。

清水建設は1907年以降、端島で炭鉱労働者の共同住宅や小中学校、病院などの建設・改修に携わり、近年も調査などに取り組んできた。研究拠点は同社が開発した木造仮設システム「シミズサイクルユニット」を活用する。離島や被災地での活用を構想しており、端島を実証の場とする。

連携協定書を手にする長崎市の鈴木市長(左)と清水建設の原田常務執行役員(15日、長崎市役所)

海底炭鉱の島として栄えた端島は「明治日本の産業革命遺産」の一部として2015年に世界文化遺産に登録された。長崎市は17年度にかけて構成資産の「修復・公開活用計画」を策定し、避難場所となる施設の整備を盛り込んでいた。

締結式で長崎市の鈴木史朗市長は「端島は長崎の大きな魅力のひとつ。持続可能な形での観光につながっていく」と期待。清水建設の原田知明常務執行役員は「著しく劣化した建物群は修復手法が確立されていない。未来に残すために貢献したい」と話した。仮想現実(VR)を活用した島内深部の模擬ツアーなどのコンテンツ制作にも取り組む方針だ。

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