東電HDは柏崎刈羽原発の6号機の早期再稼働をめざしている

東京電力ホールディングス(HD)と政府は16日、新潟県議会で柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けた地元への支援策を説明する。東電HDは再稼働によって生まれた利益を積み立てる1000億円規模の基金の創設を表明する。政府も重大事故時の避難路整備を全額国費で対応する方針を伝える。花角英世知事の再稼働への同意につなげる考えだ。

午前10時に始まる県議会の連合委員会に東電HDの小早川智明社長、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官らが参考人として出席する。安全対策や地域活性化策などを説明し、各会派からの質問を受ける。

東電HDは1000億円基金を、蓄電池や水素といったエネルギー関連事業と雇用の創出、県内教育機関や企業と連携した人材育成などにあててもらうことを想定する。県が地元経済の活性化につながる施策を求めてきたことに対応する。

新潟県は東北電力の供給エリアで、柏崎刈羽原発の再稼働によるメリットを享受しづらい。再稼働によって東電HDの経営が改善すれば、電気料金の引き下げといった恩恵が生じうるが、電力供給を受ける首都圏など東電エリアに偏る可能性が高い。

政府は原発立地地域への振興策を定める特別措置法の対象拡大を説明する。従来の原発から半径10キロメートル圏内を30キロ圏内にまで広げ、道路や港などのインフラ整備への国の補助率を上げることを8月に決定した。

重大事故の際の避難路に関して全額国費で整備する方針も示す。国と県は柏崎刈羽原発から6方向に延びる既存の高速道や国道を避難路として優先活用する計画で、県の試算では改修に総額1000億円以上かかる。

柏崎刈羽原発は福島第1原発事故を起こした東電HDが事故後初めて動かそうとしている原発で、6号機と7号機はすでに原子力規制委員会の安全審査に合格している。7号機はテロ対策施設の設置が必要で、東電HDはまず6号機の早期再稼働をめざす。

老朽化した1号機と2号機を中心に東電HDは廃炉を検討する。16日は今後の電源構成についても説明する見通しだ。

支援策や安全策を打ち出すことで、東電HDや政府は花角氏に再稼働への決断を迫る。花角氏は県民の声を把握するため、8月7日までに県内の全市町村長と意見交換し、同31日までに県民を対象とした全5回の公聴会を終えた。

県は独自に進める県民意識調査の中間結果を10月1日に公表し、6割が再稼働の条件は整っていないと回答した。花角氏は15日の県議会で「迷っている人は一定数存在する。安全・防災対策も県民に十分浸透していない」との見解を示した。意識調査の最終結果を待って、最終判断を下す。

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