ジヤトコが国際福祉機器展に展示した介助用車いす「Lifmy(リフミィ)」(8日、東京・江東)

自動車変速機大手のジヤトコ(静岡県富士市)は2026年に介護用品市場へ参入する。要介護者を乗せてベッドやトイレなどへの移動を介助する車いすをこのほど開発。介護用品以外にも電動自転車用駆動装置を供給する。主な取引先の日産自動車が経営再建を進めるなか、新規事業の売上比率を2030年までに全体の1割にし、日産依存度を引き下げる。

開発した介助用車いすの名称は「Lifmy(リフミィ)」。このほど東京都内で開かれた国際福祉機器展で展示した。リフミィは要介護者に前向きにもたれかかるようにして座ってもらう仕組みで、介護する人がバーを引っ張ってトイレなどに容易に移動させられる。

要介護者が立ったり、座ったりする際にはリモコン操作で上体を持ち上げて動作を補助する。要介護者が移動中に握るハンドルにはセンサーがついており、手が離れると動作が止まって転倒を防ぐ。

介護施設などでは要介護者をベッドから起こし、抱きかかえてトイレまで移動させることが多い。リフミィを使うと、要介護者が座ったまま移動できることから、介護者の身体的な負担が大幅に減るうえ、要介護者も体が安定した状態で移動することができる。

体を起こしてリフミィに乗る時に要介護者は脚に力を入れる。小川英二・常務執行役員は「利用する人にも無理のない範囲で体を動かしてもらい、頑張ろうという気持ちをサポートしたい」と設計の狙いを説明する。

開発のきっかけは介護問題を抱える社員からの切実な声だった。社会課題の解決につながるとしてプロジェクトを立ち上げ、担当者が医療、介護の現場を訪ねて大学の研究者などから意見を聞いた。開発期間は3年に上ったという。

販売対象として、介護施設や在宅で介護をする人を想定している。価格は未定で、26年中に販売を始める予定。レンタルでの提供も検討する。

介護用品第2弾として電動車イスの開発も現在検討している。小川常務執行役員は「医療やリハビリ分野への展開を視野に入れている」と話す。

ジヤトコが手がける小・中型車向けのCVT「Jatco CVT-XS」

ジヤトコは日産が75%を出資する日産の子会社で、自動車の無段変速機(CVT)や電気自動車(EV)向け駆動装置「イーアクスル」を手がける。25年3月期の連結売上高は前の期比9.3%減の5641億円で最終損益が389億円の赤字(前の期は158億円の黒字)だった。

主力の変速機は、変速機を必要としないEVの普及で需要が減ると見込まれており、ジヤトコは早期退職者を募集する方針だ。中国市場での日本車の不振で足元の事業環境も厳しい。今後は日産の経営再建策の影響を受ける可能性があり、長期的に日産への依存を引き下げるのは避けて通れない。

将来の収益の柱と見込む新規事業は30年までに売上高の1割にするのが目標だ。イーアクスルの技術を生かして電動アシスト自転車向けの駆動装置を開発。25年内に自転車メーカーのホダカ(埼玉県越谷市)に供給を始める。中国市場向け電動バイク用ユニットも12月から量産する予定。介護市場への参入で新たな種をまきたい考えだ。

(木下美雅)

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