
東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に関連して、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官ら3府庁幹部と東京電力の小早川智明社長を招致して開いた16日の新潟県議会連合委員会の参考人質疑。小早川氏が表明した県に対する総額1000億円規模の資金拠出は、あくまで再稼働による同社の調達費用削減効果を前提とするものだった。再稼働が資金拠出の交換条件であることが鮮明となったことから、傍聴席からは「カネと引き換えの再稼働だ」などとの怒号が飛んだ。

小早川氏は、資金拠出について「安心・安全は暮らしのための基盤整備」「地域経済の活性化への貢献」を目的に行うと表明。除排雪体制の強化や屋内退避施設整備費の一部負担▽防災産業▽カーボンニュートラル、グリーントランスフォーメーション(GX)などの分野での新規事業の創出と雇用促進▽人材育成への活用――を想定していると説明した。
資金拠出の期間について、小早川氏は原発の再稼働によって年間1000億円程度の調達費用の削減が継続的に見込まれることを仮定して、そのコスト縮減の実績に応じて行うとし、「10年程度」と述べた。拠出資金を使用する裁量権は「県にあると考えている」と強調した。

また、小早川氏は6号機の再稼働後、1、2号機の廃炉を検討する方針も表明。廃炉するか否かの判断には、検討開始から1年半程度かかるとの見通しを示した。
よどみなく「悪手」

資金の総額と拠出期間が示されたのは、知事与党・自民党の委員からの質問に対する答弁だった。事前の報道で資金拠出の詳細が既に明らかになっていたとはいえ、自民委員と参考人とのよどみのないやりとりに、知事と距離を置く会派「未来にいがた」の委員は、「議会軽視であり、県民の頰を札束でたたいているようなものだ。そういうことが(東電の)皆さんの信頼を失わせる」と語気を強めて批判した。
この参考人招致は、再稼働の是非をいまだ示さない花角英世知事の背中を押したいエネ庁のシナリオに乗った自民が東電と示し合わせて設定したとの見方がある。村瀬氏の青柳正司議長(自民)に対する参考人出席の申し出も、今県議会招集の前日だった。
こうした進め方に自民党“原発族”のベテラン国会議員は「悪手だ」と懸念する。東電の資金拠出額についても「今の経営状況で本当に拠出は可能なのか。『ない袖を振る』と収拾がつかなくなる」と心配した。【木下訓明】
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