オープンAIはカナダのショッピファイや米電子決済大手ストライプと提携し、対話型AI「チャットGPT」内で商品を検索・購入できるようにした(ロイター=共同)
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

AIショッピング機能の登場により、ブランド各社は新たな戦場に突入している。

米オープンAIは9月、電子商取引(EC)サイト構築支援を手掛けるカナダのショッピファイや米電子決済大手ストライプと提携し、プラットフォーム内決済を導入した。これにより、消費者はチャットGPT内で商品を検索し、購入できるようになった。

米アドビによると、7月の生成AIプラットフォームから米国のECサイトへのトラフィックは前年同月比4700%増えた。月を追うごとに伸びが加速しているという。

ブランド各社はAI検索で強力な存在感を確立しなくてはならない。さもなければ、AIエージェントがユーザーの代わりに商品を検索して購入する「エージェントコマース」でシェアを失いかねないからだ。

そのために有用となるのが「生成エンジン最適化(GEO)」という技術だ。この分野のスタートアップは、チャットGPTや米アンソロピックの対話型AI「クロード」、米グーグルのAIによる検索要約機能「AIオーバービュー」などでAIが生成した回答で、ブランドがどう言及されているか(可視性)を追跡、測定、最適化するツールを開発している。検索で自社コンテンツが上位に表示されるよう最適化する技術「検索エンジン最適化(SEO)」の新たなバージョンといえる。

GEO分野で急成長している企業を洗い出すため、CBインサイツのモザイクスコア(未上場企業の健全性と成長性を測定するスコア)の過去1年間の伸びに基づいてGEO企業約20社をランク付けした。各社の機能と成長の兆しから、AI検索でブランド各社を支援するGEO企業を判定した。

先発のネーティブGEOプラットフォームがリーダーに

ポイント

ネーティブGEOツールが優位に立っている。過去1年間のモザイクスコアの伸びがGEO市場の平均(14%)を上回った8社のうち7社、モザイクスコア600点以上の企業のうち2社を除く全てが、2023〜25年に創業していた。

こうした「ネーティブ」GEO企業は既存のSEOツールに変更を加えたり、機能を追加したりするのではなく、大規模言語モデル(LLM)上での可視性に特化したツールを構築している。このため、データ収集や複数のAIモデルのモニタリング、コンテンツの改善点提案などの機能が優れている。

4つの必須機能を提供できないベンダーは脱落する。モザイクスコアが上位(600点以上)の企業の分析により、各社に共通する4つの機能が明らかになった。(1)チャットGPT、パープレキシティ、AIオーバービュー、新興エンジンなど複数のAI検索プラットフォームのモニタリング、(2)AI検索で自社が競合他社と比較してどれほど言及されているかを追跡する競合ベンチマーク、(3)ブランドの印象を測定するセンチメント分析、(4)AI検索で言及されやすいコンテンツと実際に提供しているコンテンツのずれと調整についての実用的な洞察。

この4つの機能を全て提供できるベンダーが市場リーダーになるだろう。ブランド各社はGEOツールを導入する際、この4つの機能を重視すべきだ。

コンテンツ自動作成機能が差異化要因になりつつある。大半のGEOツールはAI上でのブランドの可視性を診断する機能を備えているが、リーダー各社はLLMに合わせて最適化されたコンテンツを自動作成するエンジンの開発に取り組んでいる。

英プロファウンド(Profound)は既成テンプレートを使い、収集した引用元に基づいてAIに言及されやすいコンテンツを作成する機能を提供している。サーファー(Surfer、ポーランド)の「コンテント・エディター」はLLMに対応したコンテンツ修正を提案する。米スクランチ(Scrunch)は人間向けのサイトと並行し、AI向けに最適化したサイトも構築する。

GEOの進化に伴い、LLMのコンテンツの読み取り方を追跡するだけでなく、最適なコンテンツも直接作成できるプラットフォームがエージェントによるコンテンツ発見ルールを決めるだろう。ブランド各社は最も効率的なツールを望むため、モニタリング機能しかないツールはコンテンツ作成機能を自社で開発するか、買収を通じて獲得しなくてはならなくなるだろう。

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